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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成28(行ウ)504

事件名

 国籍確認請求事件

裁判年月日

 令和3年2月18日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

判示事項

 1 2002年5月の改正前のロシア連邦国籍法15条2項前段によるロシア連邦国籍の取得と国籍法11条1項の「自己の志望によって外国の国籍を取得したとき」
2 2002年5月の改正前のロシア連邦国籍法15条2項前段によるロシア連邦国籍の取得が国籍法11条1項の「自己の志望によって外国の国籍を取得したとき」に該当するとされた事例
3 国籍法11条1項と憲法10条,13条,22条2項
4 国籍法11条1項と憲法14条1項

裁判要旨

 1 2002年5月の改正前のロシア連邦国籍法15条2項前段によるロシア連邦国籍の取得は,法定代理人による外国の国籍の志望取得であり,特段の事情のない限り,国籍法11条1項の「自己の志望によって外国の国籍を取得したとき」に該当する。
2 日本国籍を有する子の父母が,駐日ロシア連邦大使館において,2002年5月の改正前のロシア連邦国籍法15条2項前段の父母の合意文書を作成して提出し,これにより当該子がロシア連邦国籍を取得したところ,当該父母が,上記手続が単なる出生登録ではなく,当該子のロシア連邦国籍に関する手続であることを認識しており,何らの手続きを要することなく当該子がロシア連邦国籍を有することができるものとは認識しておらず,直接当該子のロシア連邦国籍の取得を希望する意思行為をするものであることを認識しつつ,上記手続を行ったことなど判示の事情の下では,当該子の上記ロシア連邦国籍の取得は,国籍法11条1項の「自己の志望によって外国の国籍を取得したとき」に該当する。
3 憲法13条及び22条2項が,日本国籍の離脱を強制されない権利を保障しているとは解し難く,また,仮に日本国籍を意思に反して奪われない利益又は法的地位が上記憲法の規定等の精神に照らして尊重されるべきものであることから,憲法10条により国籍の得喪に関する要件について立法府に与えられた裁量に一定の制約が及び得るとしても,国籍法11条1項の規定は,立法府に与えられた裁量権の範囲を逸脱又は濫用するものとはいえないから,憲法10条,13条及び22条2項に違反しない。
4 国籍法11条1項が,日本国籍を有する者が自己の志望により外国の国籍を取得した場合について,①身分行為等により外国の国籍を当然に取得した結果として重国籍が生じる場合,②出生によって日本国籍と外国の国籍を取得して重国籍が生じる場合及び③外国人が届出又は帰化により日本国籍を取得した結果として重国籍が生じる場合とは異なり,当然に日本国籍を喪失する旨定めていることは,憲法14条1項に違反しない。

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