裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成29(行ウ)192

事件名

 課徴金納付命令取消等請求事件

裁判年月日

 令和3年12月9日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 上場会社の属する企業集団の純利益につき、公表がされた直近の予想値に比較して新たに算出された予想値において金融商品取引法(令和元年法律第71号による改正前のもの)166条2項3号所定の差異が生じた事実を、上記会社の取締役が同法167条の2第1項の規定に違反して他人に伝達したことを理由に上記取締役に対してされた課徴金納付命令が、違法であるとされた事例

2 証券取引等監視委員会の証券調査官らによる課徴金に係る事件の調査時の行為が、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例

裁判要旨

 1 上場会社の属する企業集団の純利益につき、公表がされた直近の予想値に比較して新たに算出された予想値において金融商品取引法(令和元年法律第71号による改正前のもの)166条2項3号所定の差異が生じた事実を、上記会社の取締役が同法167条の2第1項の規定に違反して他人に伝達したことを理由に上記取締役に対してされた課徴金納付命令は、当該伝達行為があったとされる日以前の取締役会においては、予想値の増減率が基準値以上となる抽象的な可能性があったにとどまり、同増減率が基準値以上となる具体的な根拠に基づいた業績予想修正についての意思決定は行われていないなど判示の事情の下においては、当該伝達行為があったとされる日以前に当該差異が生じる予想値が新たに算出されたとは認められず、違法である。

2 証券取引等監視委員会の証券調査官らによる課徴金に係る事件の調査時の行為は、当該証券調査官らが、①当該事件において確認の必要性が高く、容易に確認し得る基本的な資料について、通常払うべき注意をもってこれを確認すれば、違反行為の存在につき重大な疑義を生じさせる事情を発見することができたにもかかわらず、その注意を怠って漫然とこれを看過したこと、②違反行為の存在につき重大な疑義を生じさせる情報に接したにもかかわらず、これを解明するための調査をしなかったこと、③これらの結果、客観的事実に反する質問調書を作成したことなど判示の事情の下においては、国家賠償法1条1項の適用上違法である。

全文