裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 令和4(行ウ)108

事件名

 懲戒免職処分等取消請求事件

裁判年月日

 令和6年7月22日

裁判所名

 名古屋地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市立小学校における学校給食の調理員が調理場に保存食として冷凍されていた廃棄前の食品を窃取したことを理由とする懲戒免職処分が、裁量権の範囲を逸脱するものとして違法であるとされた事例

2 職員退職手当条例(昭和31年8月31日名古屋市条例第20号。令和3年条例第20号による改正後のもの)17条1項1号の規定により懲戒免職処分を受けた者に対してされた一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分は違法であるとされた事例

裁判要旨

 1(1) 裁判所が懲戒処分の適否を審査するに当たっては、懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果と懲戒処分を比較してその軽重を論ずべきものではなく、懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきである。
 (2) 学校給食の調理員が調理場に保存食として冷凍されていた廃棄前の食品を窃取したことを理由として、市の教育委員会から、懲戒免職処分を受けた場合において、次のアないしウなどの判示の事情の下では、上記の者が、保存食を含む公金物の窃取が懲戒免職処分の対象となる行為である旨の注意喚起を受けていたにもかかわらず、明確な窃取の意思の下で、自己中心的な動機に基づいて上記の窃取に及んだこと、上記の教育委員会が定めた公金物の窃取に係る処分の量定の標準例が「免職」と定められていること等を踏まえても、処分の量定として免職を選択することは重きに失し、上記の懲戒免職処分は、裁量権の範囲を逸脱したものであり、違法である。
  ア 上記の窃取の対象物について、その財産的価値は少額であり、かつ、その数量も少量である上に、近いうちに廃棄されることが見込まれていた。
  イ 上記の者が出勤しなくなったことによる人員調整等の支障及び他の調理員の信頼関係の毀損を除き、上記の窃取により、上記の者が調理員として勤務していた小学校の業務に具体的な支障が生じたことはうかがわれない。
  ウ 上記の者は、過去に懲戒処分歴を有しておらず、また、謝罪や反省の態度を示した。

2 上記の懲戒免職処分の取消しを求める請求には理由があるから、上記の懲戒免職処分を前提とする上記の一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分は、違法である。

全文