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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成28(行ウ)211

事件名

 工事実施計画認可取消請求事件

裁判年月日

 令和5年7月18日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 全国新幹線鉄道整備法の規定の適用対象

2 全国新幹線鉄道整備法7条1項の規定による整備計画の決定等に当たり、経営上の適切性等に関する点に問題はないとした国土交通大臣の判断につき、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとは認められず、当該判断を前提とする同法9条1項の規定による認可に違法があるとはいえないとされた事例

3 水資源等に関する点を含む環境配慮審査の結果、環境の保全についての適正な配慮がなされるものとした国土交通大臣の判断につき、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとは認められず、当該判断を前提とする全国新幹線鉄道整備法9条1項の規定による認可に違法があるとはいえないとされた事例

裁判要旨

 1 全国新幹線鉄道整備法2条は、「新幹線鉄道」を「その主たる区間を列車が200キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道」と定義しているところ、これは、将来の技術の進歩を考慮して、あえて速度に関する技術的基準のみを設け、それ以外の技術的基準を設けなかったものと解され、上記の速度に関する技術的基準を満たす限り、同法の規定の適用対象となることは否定されない。
 
2 全国新幹線鉄道整備法7条1項の規定による整備計画の決定等の段階における判断は、その性質上、国土交通大臣の合理的な裁量に委ねられているものと解され、判示の事実関係の下では、専門家等で構成された委員会においてパブリックコメント等を踏まえ詳細な議論を重ねた結果として取りまとめられた答申の内容等に基づき、経営上の適切性等に関する点に問題はないとした国土交通大臣の判断につき、重要な事実の基礎を欠き又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであって、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとまでは認められないから、この点をもって、当該判断を前提とする同法9条1項の規定による認可に違法があるとはいえない。

3 環境配慮審査の結果を踏まえた上でされる全国新幹線鉄道整備法9条1項の規定による認可に係る国土交通大臣の判断は、環境配慮審査自体も含め、裁量権の行使としてされるものと解されるところ、判示の事実関係の下では、環境影響評価書の記載事項等を精査しても、水資源等に関する点を含む環境配慮審査の結果、環境の保全についての適正な配慮がなされるものとした国土交通大臣の判断につき、重要な事実の基礎を欠き又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかとまではいえず、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとは認められないから、この点をもって、当該判断を前提とする同項の規定による認可に違法があるとはいえない。

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