裁判例結果詳細

事件番号

平成14(行ウ)136

事件名

介護保険料賦課決定処分取消請求事件

裁判年月日

平成17年6月28日

裁判所名

大阪地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 泉大津市介護保険条例(平成12年泉大津市条例第9号)が,介護保険法9条1号に係る被保険者の介護保険料を同法施行令38条1項で定める区分に従い,所得の多寡に応じて5段階に設定することを規定していることと憲法14条 2  介護保険法及び泉大津市介護保険条例(平成12年泉大津市条例第9号)が低所得者を含めたすべての被保険者に介護保険料を課していることと憲法25条 3 介護保険法134条,135条の規定による介護保険料の特別徴収方式と憲法25条

裁判要旨

1 泉大津市介護保険条例(平成12年泉大津市条例第9号)が,介護保険法9条1号に係る被保険者の介護保険料を同法施行令38条1項で定める区分に従い,所得の多寡に応じて5段階に設定したことにつき,介護保険料の規定は,保険給付に要する費用の予想額,国及び地方公共団体の財政事情並びに被保険者の所得状況等の複雑多様な諸事情を専門技術的な観点から考慮し,政策的判断によって定められるものであり,広く立法機関の裁量にゆだねられているものと解されるところ,介護保険制度が,国民の共同連帯の理念に基づき設けられた制度であり,高齢者が共通に有する将来の介護リスクに備えて,すべての被保険者から保険料を徴収し,その対価として保険給付を行う制度であることに照らし,応益負担を原則としつつ,応能負担の理念も取り入れた介護保険料の5段階設定及びその内容について,裁量権の逸脱又は濫用があるとはいえず,憲法14条に違反しない。 2 泉大津市介護保険条例(平成12年泉大津市条例第9号)が,低所得者を含めたすべての被保険者から介護保険料を徴収することとしたのは,介護保険制度が,高齢者が共通に有する将来の介護リスクに備えて,すべての被保険者から介護保険料を徴収し,その対価として保険給付を行うという社会保険制度であるからであり,その徴収方法には一応の合理性があり,生活保護受給者については介護保険料相当額を加算した生活扶助が支給されること(生活保護法8条,11条1項1号,12条,生活保護法による保護の基準別表第1第2章の9),本来適用すべき介護保険料を負担すると生活保護が必要な状態になる者についての措置が設けられていること(介護保険法施行令38条1項1号ハ,同項2号ロ,同項3号ロ,同項4号ロ),収入が著しく減少した場合等に介護保険料の徴収を猶予したり,介護保険料を減免する措置が執られていること(介護保険法142条,前記条例11条,12条)等により,生活保護法を含む法制度全体をもって具体的に保障されている最低限度の生活を侵害することを抑止していることからすれば,介護保険法及び前記条例が著しく合理性を欠き明らかに裁量権を逸脱,濫用しているとはいえず,同法及び前記条例は憲法25条に違反しない。 3 介護保険料の徴収方法については立法府の広い裁量が認められるべきところ,介護保険料の特別徴収方式(介護保険法134条,135条)には,介護保険料の確実かつ効率的な徴収,介護保険料の納付の簡易化,介護保険制度の財政安定化による保険給付の確実な提供という観点から合理性が認められ,介護保険法施行令41条が,老齢又は退職を支給事由とする年金給付額が18万円以上である場合に特別徴収の方法によって徴収するものとして,年金給付額が少なくなりすぎないように配慮していることなどからすれば,介護保険法が徴収方法として特別徴収手続を定めていることは,憲法25条に違反しない。

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