裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
行政事件
- 事件番号
平成14(行ウ)151等
- 事件名
各保育所廃止処分取消等請求事件(甲,乙事件),損害賠償請求事件(丙事件)
- 裁判年月日
平成17年1月18日
- 裁判所名
大阪地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 大東市立保育園条例の一部を改正する条例(平成14年大東市条例第23号)の制定により廃止された市立保育所に,その監護する児童を入所させてきた保護者らが,市に対して提起した前記条例の制定による前記保育所の廃止処分の取消しを求める訴えが,前記条例の制定をもって行政処分(前記廃止処分)に当たるとして,適法とされた事例 2 大東市立保育園条例の一部を改正する条例(平成14年大東市条例第23号)の制定により廃止された市立保育所に,その監護する児童を入所させてきた保護者らが,市に対して提起した前記条例の無効確認,無名抗告訴訟としての前記条例に基づく準備行為及び前記保育所における保育の実施の解除の禁止(予防的不作為請求訴訟)並びに前記保育所における保育の実施(義務付け訴訟)を求める訴えが,いずれも訴えの利益がなく不適法とされた事例 3 大東市立保育園条例の一部を改正する条例(平成14年大東市条例第23号)の制定により廃止された市立保育所に,その監護する児童を入所させてきた保護者らが,市に対してした前記条例の制定による前記保育所の廃止処分の取消請求が,棄却された事例 4 大東市立保育園条例の一部を改正する条例(平成14年大東市条例第23号)の制定により廃止された保育所に,その監護する児童を入所させてきた保護者らが,市に対し,前記条例の制定による前記保育所の廃止処分は,公法上の契約である保育所利用契約の義務違反及び国家賠償法上の違法行為であるとしてした債務不履行及び国家賠償法1条に基づく損害賠償請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 大東市立保育園条例の一部を改正する条例(平成14年大東市条例第23号)の制定により廃止された市立保育所に,その監護する児童を入所させてきた保護者らが,市に対して提起した前記条例の制定による前記保育所の廃止処分の取消しを求める訴えにつき,条例の制定は,通常は,一般的,抽象的な規範を定立する立法作用の性質を有するものであり,抗告訴訟の対象となる処分には当たらないが,他に行政庁の具体的処分を経ることなく,当該条例自体によって,その適用を受ける特定の個人の具体的な権利義務に直接影響を及ぼすような例外的な場合には,当該条例の制定行為は行政処分に該当するとした上,前記条例の制定は,他に行政庁の具体的処分を待つことなく施行日をもって前記保育所を廃止し,前記保護者らの権利ないし法的地位に直接具体的な影響を与えるものであるから,行政処分に該当するとして,前記訴えを適法とした事例 2 大東市立保育園条例の一部を改正する条例(平成14年大東市条例第23号)の制定により廃止された市立保育所に,その監護する児童を入所させてきた保護者らが,市に対して提起した前記条例の無効確認,無名抗告訴訟としての前記条例に基づく準備行為及び前記保育所における保育の実施の解除の禁止(予防的不作為請求訴訟)並びに前記保育所における保育の実施(義務付け訴訟)を求める訴えにつき,前記条例の制定行為自体が行政処分に当たるとして取消訴訟を提起することができ,現にそれが提起され,それにより権利救済が図られる以上,これとは別に無効確認を求める訴えの利益はなく,また,同条例に基づく準備行為及び前記保育所における保育の実施の解除の禁止(予防的不作為請求訴訟)並びに同保育所における保育の実施(義務付け訴訟)についても,同様に取消訴訟が提起できる以上,これとは別に無名抗告訴訟としてこれらの訴訟の提起を許容する必要はなく,予防的不作為請求訴訟については,民営化により前記保育所の廃止処分の効果が発生している以上,訴えの利益は失われたとして,前記各訴えをいずれも不適法とした事例 3 大東市立保育園条例の一部を改正する条例(平成14年大東市条例第23号)の制定により廃止された市立保育所に,その監護する児童を入所させてきた保護者らが,市に対してした前記条例の制定による前記保育所の廃止処分の取消請求につき,平成9年法律第74号による改正後の児童福祉法(平成16年法律第153号による改正前)24条は,改正前の市町村の措置による入所の仕組みから,同改正により,保育所に関する情報の提供に基づき保護者が保育所を選択し,市町村と保護者との間で,保護者が選択した保育所における保育を実施することを内容とする利用契約(公法上の契約)を締結する仕組みに変更されたものであると解されるところ,保護者は,利用契約の存続期間中,当該保育所が存続しているにもかかわらず,その意に反して他の保育所への転園を強要されることなく,当該保育所において保育を受ける権利を有するものであり,同改正後においては,同利用契約は,原則として,当該保育に欠ける児童の就学までをその契約期間とするものと解するのが相当であるが,一方,公の施設の設置,管理及び廃止については,地方公共団体ないしその長の裁量的判断にゆだねられていると解するのが相当であり,その裁量権の行使に逸脱ないし濫用が存した場合には違法となるものと解されるとした上,前記保育所の廃止,民営化には,経費削減効果があり,これに合理性が認められる以上,一定程度の保育内容の変更も前記保護者らの受忍すべき範囲内のものというべきであり,これを超えて前記保護者らの前記権利を実質的に侵害する程度に内容の変更があったとは認められないから,前記保護者らが前記各児童について前記保育所所在地上の民営化された保育園での保育の実施を受けることができた以上,前記廃止処分に裁量権の逸脱,濫用があるとまでは認められず,また,市が,前記各児童について前記保育園又は他の保育所において保育を実施することを予定していたことからすれば,前記保育所の廃止,民営化は,児童福祉法33条の4にいう保育の実施の解除に当たらず,同条に規定する説明聴取手続が必要であると解することはできないことなどから,前記廃止処分は適法であるとして,前記請求を棄却した事例 4 大東市立保育園条例の一部を改正する条例(平成14年大東市条例第23号)の制定により廃止された保育所に,その監護する児童を入所させてきた保護者らが,市に対し,前記条例の制定による前記保育所の廃止処分は,公法上の契約である保育所利用契約の義務違反及び国家賠償法上の違法行為であるとしてした債務不履行及び国家賠償法1条に基づく損害賠償請求につき,前記廃止処分は適法なものであり,市が保護者説明会等を実施し一応の説明義務を果たしているなどからすれば,違法な点があったとまではいえないとして,前記請求を棄却した事例
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