裁判例結果詳細

事件番号

平成15(行コ)2

事件名

違法公金支出差止等請求控訴事件(原審・那覇地方裁判所平成8年(行ウ)第9号)

裁判年月日

平成16年10月14日

裁判所名

福岡高等裁判所 那覇支部

分野

行政

判示事項

1 県が実施した広域基幹林道事業が,自然環境を破壊し,森林法等の法令に違反する違法な事業であり,事業の一環として県知事が業者との間で工事請負契約を締結して工事代金を支出したことが違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して当時の県知事個人に対してされた損害賠償請求が,棄却された事例 2 県が実施した広域基幹林道事業が,自然環境を破壊し,森林法等の法令に違反する違法な事業であり,事業の一環として県知事が業者との間で工事請負契約を締結して工事代金を支出したことが違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して当時の県知事個人に対してされた損害賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

1 県が実施した広域基幹林道事業が,自然環境を破壊し,森林法等の法令に違反する違法な事業であり,事業の一環として県知事が業者との間で工事請負契約を締結して工事代金を支出したことが違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して当時の県知事個人に対してされた損害賠償請求につき,前記事業に基づき設置された林道は水源かん養保安林等の保安林を通過しており,前記事業に伴う工事に際して保安林の指定の解除は行われていないところ,保安林指定の趣旨及びこれに関する森林法の諸規定の内容等に照らせば,保安林内においてある行為を行うに当たり,保安林の解除手続が必要か否かは,当該行為の結果,保安林指定の目的とされた公益的機能が失われるか否かを基準として判断すべきであり,林野庁の諸通達及びこれに基づく実務の運用は,車道幅員4メートル以下の林道であって,森林の施業・管理に供するため周囲の森林と一体として管理することが適当と認められる場合については,原則として保安林指定の解除手続によることなく作業許可の対象となるとするものであって,このような取扱いは,森林法の趣旨に照らし,十分に合理性を有するものということができるとした上で,前記林道の開設は森林の施業・管理に必要なものであって,森林の施業・管理に供するため周囲の森林と一体として管理することが適当なものであると認められ,保安林区域の一部には,指定施業要件として「禁伐」とされている区域が存在するが,このことから直ちに,前記林道の開設が作業許可等の対象となり得ない等ということはできないし,他に前記林道についてそもそも作業許可等を得ることができなかったであろうというような事実は認められないことから,前記林道の設置工事については,県知事による作業許可の対象となるものであって保安林指定解除の手続は必要ではないと解すべきであるとして,前記請求を棄却した事例 2 県が実施した広域基幹林道事業が,自然環境を破壊し,森林法等の法令に違反する違法な事業であり,事業の一環として県知事が業者との間で工事請負契約を締結して工事代金を支出したことが違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,県に代位して当時の県知事個人に対してされた損害賠償請求につき,違法性が問題とされている財務会計上の行為は,工事請負契約の締結及びこれに基づく支出命令(以下「支出負担行為等」という。)であるから,同条に基づき損害賠償の対象となりうるためには,当該支出負担行為等が財務会計法規上の義務に違反したものであることを要するとした上で,前記支出負担行為等それ自体は,会計法規及びその他の諸法令に直接違反したというような事情は見当たらないが,当該支出負担行為等は,保安林区域内に林道を設置するに当たって立木の伐採及び土地の形質の変更について必要な県知事の作業許可等を得ていないという点で森林法に違反する違法な工事を行うことを直接の目的とする行為であるから,これと森林法違反の工事の施工とが単なる動機・目的の関係に過ぎないということはできず,違法な非財務会計行為と直接的かつ密接な関連性を有する行為であるところ,当該職員としては,県に対する関係で,当該支出負担行為等を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負っていたものと解すべきであり,前記林道開設工事を行うことを目的として当該支出負担行為等を行うことは,同義務に違反する違法な行為であるというべきであるが,前記工事請負契約自体は私法上有効であること,県としては同契約に基づき支出額に相当する価額の工事結果を受領した上,現に前記林道を所期の目的に即して使用していることからすれば,前記支出負担行為等によって県に工事費用等相当額の損害が発生したと認めることはできないなどとして,前記請求を棄却した事例

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