裁判例結果詳細

事件番号

平成16(行コ)7

事件名

文書不開示処分取消請求控訴事件(原審・仙台地方裁判所平成13年(行ウ)第6号)

裁判年月日

平成16年9月30日

裁判所名

仙台高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条4号該当性を争う行政文書の不開示処分取消請求訴訟における審理,判断の方法と主張立証責任 2 地方検察庁の平成10年分の調査活動費に関する支払請求書の明細欄及び領収書に関する情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条4号に該当するとされた事例 3 地方検察庁の調査活動費に関する支払明細書の明細欄及び領収書につき,これを更に細分化して,その一部を開示するよう命じることはできないとされた事例

裁判要旨

1 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条4号該当性を争う行政文書の不開示処分取消訴訟においては,まず,行政機関の長において同号所定の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるとの判断をし得る情報であることを主張立証する必要があり,これが立証された場合には,その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により同判断が全く事実の基礎を欠くか,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等によりその判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるときに限り,裁量権の逸脱又は濫用があったものとして当該不開示処分を違法とすることができるものであるところ,これらの裁量権の逸脱又は濫用を基礎付ける具体的事実の主張立証責任は,同号該当性を争う原告が負うと解するのが相当である。 2 地方検察庁の平成10年分の調査活動費に関する支払請求書の明細欄及び領収書に関する情報につき,前記各文書には,行政機関の長において行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条4号所定のおそれがあるとの判断をし得る情報が記載されていることが認められるとした上で,調査活動費が不正支出されている場合には,同号所定のおそれがある情報は記録されていないことになり,判断の前提を欠くことになるところ,当該年度の調査活動費の支出中には不正流用があったと疑う余地がないではないが,全証拠によっても,どの情報が調査活動費の不正流用に係る情報に当たるのかを区別して特定することはできないから,前記調査活動費が全額又は相当額不正流用されたことが認められない以上,全体として前記各文書には実際に調査活動に使用された金員の支払に関する情報が記録されていないということはできず,この点において同号該当性の判断に事実誤認又は事実の基礎を欠くものであったとは認められず,また,前記各文書を開示することにより,今後の調査活動が阻害され,ひいては検察権の適切な行使が妨げられるおそれがあると考えることには十分理由があり,行政機関の長の判断が明白に合理性を欠くとはいえないから,この判断に裁量権の逸脱又は濫用があったとはいえないとして,同号該当性を肯定した事例 3 地方検察庁の調査活動費に関する支払明細書の明細欄及び領収書につき,行政機関の保有する情報の公開に関する法律6条1項は,1個の行政文書に複数の情報が記録されている場合において,それらの情報のうちに同法(平成13年法律第140号による改正前)5条4号の不開示情報に該当するものがあるときは,当該情報を除いたその余の情報についてのみ,これを開示することを行政機関の長に義務付けているにすぎず,同項が,不開示情報に該当する独立した一体的な情報を更に細分化して,その一部を不開示とし,その余の部分にはもはや不開示事由に該当する情報は記載されていないものとみなして,これを開示することまでも,行政機関の長に義務付けていると解することはできないところ,前記明細欄は各調査活動費の支払ごとに,その年月日,金額,使用目的,取扱者等の関係記載部分が,その調査活動に関する独立した一体的な情報をなすものとみるべきであり,前記領収書もその年月日,受領金額,受領者の氏名及び印影が独立した一体的な情報をなすものとみるべきであるとして,前記各文書の部分開示を命ずることはできないとされた事例

全文

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