裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成15(行コ)247
- 事件名
退去強制令書発付処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成12年(行ウ)第211号)
- 裁判年月日
平成16年3月30日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 出入国管理及び難民認定法49条3項の法務大臣の裁決の行政事件訴訟法3条3項の「裁決」該当性 2 在留期間を10年近く超えて本邦に在留するイラン・イスラム共和国国籍の者ら家族がした,主任審査官の退去強制令書発付処分の取消請求が,棄却された事例 3 出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前。以下同じ。)49条5項により退去強制令書を発付することについての主任審査官の裁量権の有無
- 裁判要旨
1 容疑者が出入国管理及び難民認定法24条各号のいずれかに該当する旨の入国審査官の認定は,抗告訴訟の対象となる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に該当し,これに対する口頭審理の請求を受けてされる特別審理官による判定は,入国審査官の認定に対する不服申立てに対して義務として応答するものであるから,行政事件訴訟法3条3項の「裁決」に当たるところ,これに対する異議の申出を受けてされる出入国管理及び難民認定法49条3項の法務大臣の裁決は,前記特別審理官の判定に対する不服申立てに対し義務として応答するものであり,また,同裁決は,容疑者に直接通知されるものではないものの,これを受けて主任審査官が行う容疑者の放免又は法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたことを容疑者に知らせることは,法務大臣の裁決があったことを告知する行為にほかならないのであるから,前記法務大臣の裁決は,行政事件訴訟法3条3項の「裁決」に当たる。 2 在留期間を10年近く超えて本邦に在留するイラン・イスラム共和国国籍の者ら家族がした,主任審査官の退去強制令書発付処分の取消請求につき,適法な在留資格を有しない前記家族が当該退去強制令書発付処分の原因となった法律以外に法律に違反したことがなく,長期間平穏かつ公然と在留してきたものであり,また,退去強制の結果,同人らが本邦において形成してきた生活の基盤が失われるなどの不利益を被るとしても,在留特別許可を付与すべきかどうかの判断において,それらの事情を同人らに有利に考慮すべきであるとはいえず、そのような考慮をしないで,同人らを帰国させることが,社会通念上著しく妥当性を欠くということはできないなどとして,前記請求を棄却した事例 3 出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前。以下同じ。)49条4項は,主任審査官は,法務大臣から異議の申出が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは,直ちに当該容疑者を放免しなければならないと規定し,同条5項は,主任審査官は,法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは,すみやかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるとともに,退去強制令書を発付しなければならないと規定するのみであり,主任審査官が法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたにもかかわらず退去強制令書を発付しないことを予定した規定がないことにかんがみるならば,同法においては,容疑者を放免するにせよ,退去強制令書を発付するにせよ,同条1項の異議の申出を受けた法務大臣の判断にゆだねられているものと解すべきであるから,同条5項により退去強制令書を発付することにつき,主任審査官に裁量権はない。
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