裁判例結果詳細

事件番号

平成15(行コ)19

事件名

請負契約無効確認損害賠償等請求控訴事件(原審・徳島地方裁判所平成12年(行ウ)第3号)

裁判年月日

平成16年3月11日

裁判所名

高松高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 公共工事の指名競争入札において談合が行われた結果,落札価格が不当に高くなり,県が損害又は損失を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項3号に基づき県知事に対してされた建設会社及びその株主並びに当時の県知事及び県職員各個人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実の違法確認を求める訴えが,監査請求前置及び出訴期間遵守において欠けるところはなく適法とされた事例 2 公共工事の指名競争入札において談合が行われた結果,落札価格が不当に高くなり,県が損害又は損失を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき県に代位してされた怠る事実の相手方であり破産者である建設会社及びその株主に対する損害賠償又は不当利得返還を求める訴えを,前記各破産者の破産管財人に対する破産債権確定訴訟に交換的に変更した場合につき,変更後の訴えが,不適法とされた事例 3 公共工事の指名競争入札において談合が行われた結果,落札価格が不当に高くなり,県が損害又は損失を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき県に代位して怠る事実の相手方である建設会社及びその株主に対してされた損害賠償請求又は不当利得返還請求並びに同項3号に基づき県知事に対してされた前記損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実の違法確認請求のうち,前記建設会社に係る請求が,いずれも一部認容された事例 4 公共工事の指名競争入札において談合が行われた結果,落札価格が不当に高くなり,県が損害又は損失を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき県に代位して怠る事実の相手方である当時の県知事及び県職員各個人に対してされた損害賠償請求又は不当利得返還請求並びに同項3号に基づき県知事に対してされた前記損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実の違法確認請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

1 公共工事の指名競争入札において談合が行われた結果,落札価格が不当に高くなり,県が損害又は損失を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項3号に基づき県知事に対してされた建設会社及びその株主並びに当時の県知事及び県職員各個人に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実の違法確認を求める訴えにつき,住民らは,前記県知事が,県の被った損害の補てんを前記建設会社並びに前記当時の県知事及び県職員各個人に対して請求しないことの是正を求める住民監査請求をしており,これには,前記違法を確認する旨を対象として含むものと解するのが相当であり,また,前記訴えは,出訴期間経過後に同項4号に基づく訴えから変更して提起されたものであるが,いずれも県が請求権の行使を怠っている状態を解消し,県の損害を防止,回復するという同じ目的に立つものであるから,出訴期間の関係においては,前記変更後の訴えを,出訴期間内に提起された当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視して出訴期間の遵守に欠けるところがないと解すべき特段の事情があるというべきであるとして,前記訴えは,監査請求前置及び出訴期間遵守において欠けるところはなく適法とした事例 2 公共工事の指名競争入札において談合が行われた結果,落札価格が不当に高くなり,県が損害又は損失を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき県に代位してされた怠る事実の相手方であり破産者である建設会社及びその株主に対する損害賠償又は不当利得返還を求める訴えを,前記各破産者の破産管財人に対する破産債権確定訴訟に交換的に変更した場合につき,同号は,怠る事実の相手方に対して県が有する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を県民が代位行使するという形式によって,県民が直接当該相手方に対して県に金員を支払うよう求める類型の訴訟を提起すること以外に,債権者代位請求のように,県民が県に代位して県の有する権利を代位行使することを認めたものではないから,怠る事実の相手方が破産宣告を受けた場合に,県民が,同号を根拠として,県が怠る事実の相手方に対して有する破産債権を破産管財人に届け出ることは認められず,かかる届出に対して破産管財人が異議を述べた場合に,破産管財人に対して破産債権確定訴訟を提起ないし追行することが認められるものでもなく,他に,県民が県に代位して県の有する破産債権の届出及びこれに続く破産債権確定訴訟の提起ないし追行をなし得ることを認めた法令は存しないとして,前記変更後の訴えを不適法とした事例 3 公共工事の指名競争入札において談合が行われた結果,落札価格が不当に高くなり,県が損害又は損失を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき県に代位して怠る事実の相手方である建設会社及びその株主に対してされた損害賠償請求又は不当利得返還請求並びに同項3号に基づき県知事に対してされた前記損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実の違法確認請求につき,前記入札において談合が行われた事実が認められるところ,談合行為は競争入札の公正を害する違法行為であるから,前記建設会社は前記損害を賠償する責任を負うというべきであるが,前記株主は,配偶者とともに前記建設会社の発行済株式総数の5分の4を保有していたものの,前記工事の受注につき前記建設会社と実質的に同一の人格を有していたということはできないし,前記談合について,前記株主が前記建設会社の代表者又は入札担当者と共謀していたものと推認することもできないから,前記談合について不法行為責任を負うということはできないとした上で,損害額につき,談合によって形成された実際の請負契約金額と適正な競争により形成されたであろう想定契約金額の差額相当額が損害額といえるところ,その性質上当該金額を立証することは極めて困難であるから,民事訴訟法248条を適用して,公正な自由競争が行われていた他の入札についておおむね予定価格の約67パーセント付近の金額で落札されていた傾向を考慮し,契約金額の20パーセントが相当な損害額であるとして,前記各請求のうち前記建設会社に係る請求を,いずれも一部認容した事例 4 公共工事の指名競争入札において談合が行われた結果,落札価格が不当に高くなり,県が損害又は損失を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき県に代位して怠る事実の相手方である当時の県知事及び県職員各個人に対してされた損害賠償請求又は不当利得返還請求並びに同項3号に基づき県知事に対してされた前記損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を怠る事実の違法確認請求につき,前記入札において談合が行われた事実は認められるが,前記当時の県知事個人は,前記入札の執行及び請負契約締結の事務について県事務委任規則又は県事務決裁規程に基づき県知事より委任を受け又は専決権限を与えられた事務として処理していた入札執行職員の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反した場合に限り,不法行為責任を負うと解すべきところ,入札執行職員による違法行為の存在を認めるに足りる証拠及び当時の県知事が入札執行職員の違法行為をあらかじめ認識し得たことを認めるに足る証拠はいずれもなく,前記入札について指揮監督上の義務を怠る過失があったものとは認められないとして,また,前記当時の県職員は,前記入札に係る事務について何らの権限も有しておらず,事実上同事務にかかわったというような事情もないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

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