裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成14(行コ)57
- 事件名
行政文書部分公開決定処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成12年(行ウ)第124号)
- 裁判年月日
平成15年12月25日
- 裁判所名
大阪高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,事業用地の買収や代替地の取得,譲渡の際のこれらの価格,単価の情報が,大阪府情報公開条例9条1号所定の非公開事由(個人情報)に該当するとされた事例 2 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,事業用地の買収や代替地の取得,譲渡の際のこれらの価格,単価の情報が,大阪府情報公開条例8条1号所定の非公開事由(法人等情報)に該当するとされた事例 3 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,土地開発公社土地評価審査会が代替地の評価額を公社に答申した際の評価答申額,諮問価格や評価答申額を基礎として時点修正を加えた算出額等の情報が,大阪府情報公開条例9条1号又は同条例8条1号所定の非公開事由(個人情報又は法人等情報)に該当するとされた事例 4 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,事業用地の買収や代替地の取得,譲渡の際のこれらの価格,単価の情報,及び土地開発公社土地評価審査会が代替地の評価額を公社に答申した際の評価答申額,諮問価格や評価答申額を基礎として時点修正を加えた算出額等の情報が,大阪府情報公開条例8条4号所定の非公開事由(事務事業情報)に該当するとされた事例 5 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,個人の認印による印影の情報が,大阪府情報公開条例9条1号所定の非公開事由(個人情報)に該当しないとされた事例 6 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,法人の認印による印影の情報が,大阪府情報公開条例8条1号所定の非公開事由(法人等情報)に該当しないとされた事例 7 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,個人の実印による印影の情報が,大阪府情報公開条例9条1号所定の非公開事由(個人情報)に該当するとされた事例 8 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,法人の実印による印影の情報が,大阪府情報公開条例8条1号所定の非公開事由(法人等情報)に該当するとされた事例
- 裁判要旨
1 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,事業用地の買収や代替地の取得,譲渡の際のこれらの価格,単価の情報につき,前記情報は,買収対象の土地や代替地の所有者や取得予定者が個人である場合,当該個人の財産や所得に関する情報に該当し,前記各文書のうち,当該個人の氏名,住所,所有する土地の所在,地番,地目及び地積に関する情報は既に公開されており,これに加えて買収価格等の情報を公開すると,個人が事業用地,代替地を幾らで譲渡し,代替地を幾らで取得したかが明らかとなる関係にあることから,前記買収価格等は,単なる土地価格という性格を超えた個人の財産若しくは所得等に関する情報そのものということができ,既に公開されている情報と相俟って特定の個人が識別され得る情報といえ,大阪府情報公開条例9条1号にいう個人識別情報に該当することは明らかであるとした上で,同号にいう「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」とは,一般的に社会通念上他人に知られることを望まないものをいうものと解されるところ,前記情報は,買収価格等が客観性のある価格であるとしても,一般に公開されているものでも公開が予定されているものでもなく,しかも,地権者としては,その公表を望まないのが通例であるから,「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に当たるとして,前記情報は,大阪府情報公開条例9条1号所定の非公開事由(個人情報)に該当するとした事例 2 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,事業用地の買収や代替地の取得,譲渡の際のこれらの価格,単価の情報につき,事業用地や代替地の所有者,代替地の取得予定者が事業者等である場合,前記情報は,事業者等の資産や所得に関する情報であるところ,大阪府情報公開条例8条1号は,事業者等に関する情報の公開により事業者等の営業の自由や公正な競争秩序が侵されることのないようにするため非公開事由を定めたものと解されるから,同号にいう「競争上の地位」を害すると認められる情報とは,生産技術上のノウハウや,取引上,金融上,経営上の秘密等,公開されることにより公正な競争の原理を侵害するなど当該事業者等の営業上の地位に不利益を及ぼすと認められるものを,「その他正当な利益」を害すると認められる情報とは,事業を営む者に対する名誉侵害,社会的評価の低下となる情報,公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものを指すと解されるとした上で,買収等の相手方となっている事業者等の中には株式会社や信用金庫があり,計算書類等の作成及び公示が義務づけられているものの,個別の不動産取引における個別の代金額まで記載を要するものとはされておらず,事業用地や代替地に関する土地取引の具体的内容は,計算書類等の公示によって株主,会員や債権者に開示されるものではなく,まして,一般に公表することが予定されているということもできないことから,個別の不動産取引における個別の代金額は,事業者等の内部管理情報というべきであり,これを公開することは,事業者等の「その他正当な利益」を害するものと認められるとして,前記情報は,大阪府情報公開条例8条1号所定の非公開事由(法人等情報)に該当するとした事例 3 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,土地開発公社土地評価審査会が代替地の評価額を公社に答申した際の評価答申額,諮問価格や評価答申額を基礎として時点修正を加えた算出額等の情報につき,前記情報は,代替地の取得,譲渡について,公社が代替地の時価算定を諮問し,土地評価審査会が時価の算定評価を行うもので,評価答申額等を単体で考察すれば,代替地の取得,譲渡の価格そのものとは異なる公社の内部資料にすぎないといえなくもないが,前記の取得,譲渡の価格は,前記の評価答申額等と同額の場合が多く,その場合には,評価答申額等は,取得,譲渡の価格と同じものと評価することができ,評価答申額等を公開すれば,実際の取得,譲渡価格を推知させるものであるとして,前記情報は,取得,譲渡の相手方が個人である場合には大阪府情報公開条例9条1号所定の非公開事由(個人情報)に,相手方が法人である場合には同条例8条1号所定の非公開事由(法人等情報)に該当するとした事例 4 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,事業用地の買収や代替地の取得,譲渡の際のこれらの価格,単価の情報,及び土地開発公社土地評価審査会が代替地の評価額を公社に答申した際の評価答申額,諮問価格や評価答申額を基礎として時点修正を加えた算出額等の情報につき,事業用地の買収価格等の決定が必ずしも容易でなく,不動産鑑定の専門家によっても評価額が異なることがあり,しかも,妥結した価額が交渉の結果によるもので一律に決定されるものではないとの事情にかんがみると,公共事業用地の地権者に対する用地買収交渉の継続中に,他の買収交渉に係る土地の価格,評価額が明らかになると,未買収地の所有者が,既買収地若しくは他の土地と自己所有地の価格評価要因の違い,評価時点の違い等を正しく認識しないまま,明らかになった買収価格等を前提に自己に有利な価格を算定するなどして,買収交渉が難航し,未買収地の円滑な買収に支障が生ずるおそれがあることは否定できず,そのほか,土地所有者が,公開された買収価格,評価額に対抗するため,自己に有利な価格を適正な価格であるとする私的な鑑定書に基づき買収交渉を進めようとすることも考えられ,同種公共事業において,自己の私的経済活動に係る情報を公開されることをおそれて用地買収に応じないといった者も現れることなどが予想されるところ,このような場合に交渉が大幅に長引き,場合によっては事業用地,代替地の売買契約が成立するまでに至らない事態や,その結果,公共事業の著しい遅滞が生ずる可能性も否定できないなど,円滑な事業用地・代替地買収に対する阻害要因となる諸事情を考慮すると,前記情報は,大阪府情報公開条例8条4号所定の非公開事由(事務事業情報)に該当するとした事例 5 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,個人の認印による印影の情報につき,印影は,文書における作成名義人の氏名と相俟って文書が作成名義人の意思に基づき作成されたものであることを証するものであり,地権者が個人の場合は特定の個人が識別され得る情報に当たるが,社会において実印の果たす機能,役割と認印のそれとは異なり,認印は,書面作成名義人の意思を証するものではあるが,認印の重要度は低いものと意識されており,日常的に多種多様な書面に押捺されるものであり,その管理は実印ほど厳格ではなく,使用される印章も多くはいわゆる三文判として市中で大量に販売されているものが使用されており,人の同一性を証明するものとしての重要性に乏しいものであることから,このような認印による印影は,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であるとはいえないとして,個人の認印による前記印影の情報は,大阪府情報公開条例9条1号所定の非公開事由(個人情報)に該当しないとした事例 6 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,法人の認印による印影の情報につき,印影は,文書における作成名義人の氏名と相俟って文書が作成名義人の意思に基づき作成されたものであることを証するものであり,地権者が事業者等であれば法人等に関する情報に当たるが,社会において実印の果たす機能,役割と認印のそれとは異なり,認印は,書面作成名義人の意思を証するものではあるが,認印の重要度は低いものと意識されており,日常的に多種多様な書面に押捺されるものであり,その管理は実印ほど厳格ではなく,使用される印章も多くはいわゆる三文判として市中で大量に販売されているものが使用されており,人の同一性を証明するものとしての重要性に乏しいものであることから,このような認印による印影は,公にすることにより当該事業者等の正当な利益を害するとはいえないとして,法人の認印による前記印影の情報は,大阪府情報公開条例8条1号所定の非公開事由(法人等情報)に該当しないとした事例 7 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,個人の実印による印影の情報につき,実印は,市役所,登記所に印鑑登録された印章であり,文書に作成名義人の実印を押捺し,印鑑登録証明書を添付することにより,文書作成名義人の同一性が証明されることになるが,我が国においては,実印の持つこのような機能及びその重要性から,実印,印鑑登録カード及び印鑑登録証明書は厳重に保管され,いずれも一般に公開されるものではなく,公開が予定されているものでもないため,実印による印影は,一般に秘匿され,みだりに公開されず,容易に他人が知ることができない情報となっており,契約書等の重要とみられる意思表示文書に用いられ,高い信頼性が置かれているところ,このような実情において,実印による印影の情報が一般に公開されるとなれば,その偽造は現在の技術水準では極めて容易であり,悪用されるおそれが多分にあることから,社会における実印の取扱いの実情を考慮すると,個人識別情報として,実印による印影を秘密にしておくことが是認され,その公開の可否,範囲を自ら決定することができる権利ないしそれを自己の意思によらないでみだりに他に公開されない利益を有しているというべきであるとして,個人の実印による前記印影の情報は,大阪府情報公開条例9条1号所定の非公開事由(個人情報)に該当するとした事例 8 公共事業用地として買収の対象となる土地の地権者のために,土地開発公社が代替地を取得し地権者に譲渡する業務に関し,大阪府が公社による代替地の取得又は処分について公社との間で協議を行った際に作成又は取得し,保管している申請書,契約書,その他協議及び決裁に関わる各文書に記載された情報のうち,法人の実印による印影の情報につき,実印は,市役所,登記所に印鑑登録された印章であり,文書に作成名義人の実印を押捺し,印鑑登録証明書を添付することにより,文書作成名義人の同一性が証明されることになるが,我が国においては,実印の持つこのような機能及びその重要性から,実印,印鑑登録カード及び印鑑登録証明書は厳重に保管され,いずれも一般に公開されるものではなく,公開が予定されているものでもないため,実印による印影は,一般に秘匿され,みだりに公開されず,容易に他人が知ることができない情報となっており,契約書等の重要とみられる意思表示文書に用いられ,高い信頼性が置かれているところ,このような実情において,実印による印影の情報が一般に公開されるとなれば,その偽造は現在の技術水準では極めて容易であり,悪用されるおそれが多分にあることから,社会における実印の取扱いの実情を考慮すると,法人等の内部管理情報として,実印による印影を秘密にしておくことが是認され,その公開の可否,範囲を自ら決定することができる権利ないしそれを自己の意思によらないでみだりに他に公開されない利益を有しているというべきであるとして,法人の実印による前記印影の情報は,大阪府情報公開条例8条1号所定の非公開事由(法人等情報)に該当するとした事例
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