裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
行政事件
- 事件番号
平成14(行ウ)355
- 事件名
公文書非開示決定取消請求事件
- 裁判年月日
平成15年5月29日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 「大正天皇の病状について大正14年の期間について記録されているもの(医療関係録大正14年)」及び「大正天皇の病状について大正15年の期間について記録されているもの(医療関係録大正15年)」に記録された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条1号所定の個人識別情報に当たるとされた事例 2 行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく「大正天皇の病状について大正14年の期間について記録されているもの(医療関係録大正14年)」及び「大正天皇の病状について大正15年の期間について記録されているもの(医療関係録大正15年)」の開示請求につき,「公益上特に必要があると認めるとき」に当たらないとして開示しなかったことが,裁量権の逸脱又は濫用に当たらないとされた事例 3 行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく大正天皇の大正14年及び大正15年における各「病状として異常な挙動及び血液に関する記録」の開示請求につき,当該各文書の存否を明らかにしないで,同開示請求を拒否することができるとされた事例
- 裁判要旨
1 「大正天皇の病状について大正14年の期間について記録されているもの(医療関係録大正14年)」及び「大正天皇の病状について大正15年の期間について記録されているもの(医療関係録大正15年)」に記録された情報につき,個人情報保護法2条2号が,同法にいう「個人情報」を「生存する個人に関する情報」と限定的に規定して,死者に関する情報を同法の個人情報から除外しているのに対し,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条1号は,単に「個人」に関する情報を不開示情報として規定しているにすぎないのであって,限定的に「生存する個人」に関する情報のみを不開示情報として規定しているものではないことに照らせば,同号所定の個人識別情報には死者に関する情報も含まれるものと解するのが相当であるとした上,前記の各文書は,大正14年及び大正15年に,当時の宮内省の侍医寮に所属した侍医が,大正天皇の健康状態を毎日診察した結果等を記録した文書であり,体温,脈拍,呼吸,飲食の内容,薬服用,医師の所見等,大正天皇の健康状態に関する情報を記録したものであるとして,前記各文書に記録された情報が,同号所定の個人識別情報に当たるとした事例 2 行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく「大正天皇の病状について大正14年の期間について記録されているもの(医療関係録大正14年)」及び「大正天皇の病状について大正15年の期間について記録されているもの(医療関係録大正15年)」の開示請求につき,同法7条は,行政機関の長が,公益上特に必要があると認める場合に,その裁量により開示請求に係る行政文書を開示することができることを規定したものであるから,同条による行政文書の開示をしなかった行政機関の長の判断が,与えられた裁量権を逸脱又は濫用するものでない限り,違法となることはないと解されるところ,前記請求をした者が前記各文書を開示することに公益上特に必要があると認められる理由として主張する天皇家が極めて貴重な医学,生物学等の研究対象であって,大正天皇の病名解明が医学研究に有力な資料を提供し,人類の進歩に貢献するというような事情をもって,前記各文書を開示することに公益上特に必要があると認めることはできないとして,「公益上特に必要があると認めるとき」に当たらないとして開示しなかったことが,裁量権の逸脱又は濫用に当たらないとされた事例 3 行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく大正天皇の大正14年及び大正15年における各「病状として異常な挙動及び血液に関する記録」の開示請求につき,当該各文書の存在について応答することにより,大正天皇が前記の年に病状として異常な挙動を示していたか否か,また,大正天皇の血液に関して病状として何らかの異常があったか否かという情報を開示することになり,当該各情報は,「個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」に該当するから,前記各文書の存否について応答するだけで同法(平成13年法律第140号による改正前)5条1号本文に当たる不開示情報を開示することとなるとして,当該各文書の存否を明らかにしないで,前記各開示請求を拒否することができるとされた事例
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