裁判例結果詳細

事件番号

平成13(行コ)247

事件名

建築基準法第42条2項道路不存在確認請求控訴事件(原審・甲府地方裁判所平成11年(行ウ)第8号)

裁判年月日

平成14年10月31日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 建築物の敷地北側に隣接する道路と同敷地の西側近傍の道路について,告示をもって包括的に指定する方式によりされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定が,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとされた事例2 建築物の敷地北側に隣接する道路と同敷地の西側近傍の道路について,告示をもって包括して指定する方式によりされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定の不存在確認訴訟につき,前記建築物の居住者の原告適格が,一部肯定された事例3  建築物の敷地北側に隣接する道路について,告示をもって包括して指定する方式によりされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定の不存在確認請求が,認容された事例

裁判要旨

1 建築物の敷地及びその隣地の北側の接道と同隣地の西側の接道について,告示をもって包括して指定する方式によりされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定につき,同項は,包括指定方式による特定行政庁の指定も許容しているものと解することができるところ,前記告示は,幅員4メートル未満1.8メートル以上の道を一括して指定するものであるが,これによって,同法3章の規定が適用されるに至った時点において現に建築物が建ち並んでいる幅員4メートル未満の道のうち,前記告示の定める都市計画区域内にあり幅1.8メートル以上の条件に合致するものすべてについて前記指定がされたこととなり,その効果が生ずるものと解され,同指定の効果が及ぶ個々の道の敷地所有者は,具体的な私権の制限を受けることになるから,前記指定は,包括指定方式でされた場合であっても個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり,個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができるとして,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとされた事例2 建築物の敷地北側に隣接する道路と同敷地の西側近傍の道路について,告示をもって包括して指定する方式によりされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定の不存在確認訴訟につき,行政事件訴訟法9条にいう「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たるが,当該行政法規が,前記趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨,目的,当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容,性質等を考慮して判断すべきであり,この理は,同法36条にいう「法律上の利益を有する者」の解釈においても異なるものではないところ,建築基準法42条1項及び2項等の規定からすると,同法は,本来,都市計画区域内の道路については幅員4メートルの道路が確保されることが必要であるとしつつ,直ちにこれを全面的に適用した場合の不都合を考慮し,経過措置として,幅員4メートル未満の道であっても同法42条1項の要件を満たす場合には,これを直ちに道路とみなすことを許容したものということができ,この限りで,幅員4メートルの道路を確保することによる他の利益の保護を制限したものといえるのであって,同法42条2項は,同法施行日の時点において現に存在する建築物の所有者等の財産を一定の限度で保護することを目的とするものであり,これを超えて,当該道路の指定がされた道路に接することにより同法43条1項の要件を充足する敷地上の建築物の周辺住民の生命,身体の安全等についてまで保護することを目的としているということはできないとした上,前記北側に隣接する道路について前記指定が存在するとすれば,その中心線から水平距離2メートルの範囲について同法44条の建築制限が及ぶほか,同法45条の私道の変更又は廃止の制限等の制限が及ぶこととなるから,同道路に係る前記指定の存否は,前記建築物の居住者の権利義務に対して直接影響を与えるものということができるとして,その不存在確認訴訟につき,前記建築物の居住者の原告適格を肯定し,前記西側近傍の道路に係る前記指定の不存在確認の訴えにつき,同人の原告適格を否定した事例3 建築物の敷地北側に隣接する道路について,告示をもって包括して指定する方式によりされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定の不存在確認請求につき,前記道路について前記指定が存在するといえるためには,同法施行日時点において,現に建築物が建ち並んでいる道であり,かつ,その幅員が4メートル未満1.8メートル以上であったことの主張立証が必要であり,また,建築物が建ち並んでいるといえるためには,少なくとも,当該道のみによって接道義務を充足する建築物が2戸以上存在することの主張立証が必要であるところ,現況の地形や過去の建築確認が積み重ねられた事実から,同法施行日における道の存在を推認することには無理があり,また,同法施行日において何らかの道があったとしても,現に建築物が建ち並んでいる道であったことを認めることはできないとして,前記請求を認容した事例

全文

全文

ページ上部に戻る