裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成14(行コ)4
- 事件名
各給水条例無効確認等請求控訴事件(原審・甲府地方裁判所平成11年(行ウ)第7号等)
- 裁判年月日
平成14年10月22日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額に設定している高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)の別表は,同人らを不当に差別するものであるとして提起した同別表の無効確認の訴えが,行政訴訟として適法であるとされた事例 2 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,町営水道の一時的な休止を認める対象者から別荘所有者を除外している「高根町簡易水道事業給水条例及び施行規則に関する内規」は,同人らを不当に差別するものであるとして提起した同内規の無効確認の訴えが,民事訴訟としても行政訴訟としても不適法であるとされた事例 3 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,水道事業者である町が高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)を改正して定めた同条例の新たな別表は,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額とするものであって無効であるとして,同別表の定める基本料金と従前の基本料金との差額に関して,未払水道料金についてはその債務不存在確認を求め,支払済みの水道料金相当額についてはその不当利得返還又は不法行為に基づく損害賠償を求めた各請求が,いずれも認容された事例 4 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,水道事業者である町が高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)を改正して定めた同条例の新たな別表は,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額とするものであって無効であるとして,町に対してした未払い水道料金があることを理由とする給水停止の差止請求が,認容された事例
- 裁判要旨
1 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額に設定している高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)の別表は,同人らを不当に差別するものであるとして提起した同別表の無効確認の訴えにつき,給水契約という継続的供給契約においては,日々料金債務が発生しているのであるから,個々の水道料金について債務不存在確認を求めることはう遠であり,より抜本的な紛争解決のためには,水道法14条1項に基づいて定められた約款である供給規程自体の無効確認を求めることも許されるものと解され,この供給規程が条例の形式で定められているときには,その施行によって,その後にされる個別的行政処分を要せずに,その内容が給水契約の内容となって水道需用者は義務を課されることになるから,当該条例自体を行政処分性を有するものとして行政訴訟による無効確認の訴えの対象とすることができるとして,前記訴えを行政訴訟として適法であるとした事例 2 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,町営水道の一時的な休止を認める対象者から別荘所有者を除外している「高根町簡易水道事業給水条例及び施行規則に関する内規」は,同人らを不当に差別するものであるとして提起した同内規の無効確認の訴えにつき,当該内規は,同町の簡易水道事業における内部の取扱方針を定めたものにすぎず,水道法14条1項に基づく供給規程の一部として直接水道需用者の供給契約の内容となってこれに義務を課すものではなく,同内規の定立自体によってはいまだ同人らの権利又は法的地位に対する具体的不安ないし危険が発生したとはいえないとして,前記訴えは,民事訴訟としても行政訴訟としても不適法であるとした事例 3 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,水道事業者である町が高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)を改正して定めた道条例の新たな別表は,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額とするものであって無効であるとして,同別表の定める基本料金と従前の基本料金との差額に関して,未払水道料金についてはその債務不存在確認を求め,支払済みの水道料金相当額についてはその不当利得返還又は不法行為に基づく損害賠償を求めた各請求につき,同町内における別荘全体の年間を通した水道の使用量は契約者全体の5パーセント前後であり,その使用量を基に水道料金を算出すると,別荘が夏期等に一時的に使用する水量及びそれに見合った給水施設のかなりの割合を別荘所有者以外の住民が年間を通して実質的に負担することとなり,かえって別荘所有者とそれ以外の住民との公平が図られず,また,別荘の水道使用料は年間を通しておおむね基本水量内に収まっているのであるから,別荘所有者に年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させる方法として,基本料金を別荘以外の住民に比べて高額にして調整すること自体は,水道事業者の政策的料金体系として許されないものではなく,また,大多数の別荘使用者は他に生活の本拠地を持っており,別荘の使用が生活に必要不可欠なものではないのであるから,このような別荘所有者に対しては,生活用水の低額化を図るという水道事業の公共性を重視した政策的要素を採り入れる必要性の程度が低く,したがって,必ずしも同じ口径の水道メーターを使用する一般住民との均衡を図る必要はないと考えられるから,その均衡を損なわない程度において政策的に別荘の水道料金を一般住民に比べて高額に設定しても,それが合理的な範囲内にとどまる限りは不当な差別には当たらないとした上で,前記別表は,別荘所有者の基本料金を別荘以外の同じ口径の水道メーターを使用する住民のそれと比較して3.57倍ないし9.33倍と高く設定し,前記改正による値上げ幅も20倍ないし40倍になっているから,合理的な範囲内にあるとは認められず,その定めは不当な差別に該当し,同別表は無効であるとして,前記各請求をいずれも認容した事例 4 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,水道事業者である町が高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)を改正して定めた同条例の新たな別表は,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額とするものであって無効であるとして,町に対してした未払い水道料金があることを理由とする給水停止の差止請求につき,前記別表が,別荘所有者の基本料金をそれ以外の住民と比べて高額に設定していることは不当な差別に当たるから,同別表は無効であるとして,前記差止請求を認容した事例
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