裁判例結果詳細

事件番号

平成13(行コ)33

事件名

静岡空港設置許可処分取消請求控訴事件(原審・静岡地方裁判所平成8年(行ウ)第11号)

裁判年月日

平成14年9月26日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 航空法(平成11年法律第160号による改正前)38条1項に基づいて運輸大臣のした飛行場の設置許可処分につき,当該飛行場の敷地部分の土地又は設置許可に伴い用益制限が生ずる周辺の土地について所有権を有する者及びこれらの土地上に立木を所有する者は,前記処分の取消しを求める原告適格を有するとした事例 2 航空法(平成11年法律第160号による改正前)39条1項5号にいう「所有権その他の使用の権原を(中略)確実に取得することができる」と認められるか否かの判断基準 3 航空法(平成11年法律第160号による改正前)38条1項に基づいてされた飛行場の設置許可申請を運輸大臣が許可するに当たり,当該申請に係る飛行場設置計画は,同法施行規則(平成12年運輸省令第42号による改正前)79条1項1号で定める設置基準に適合するとした判断につき,違法な点はないとした事例 4 航空法(平成11年法律第160号による改正前)38条1項に基づいて運輸大臣のした飛行場の設置許可処分が,違法とはいえないとされた事例

裁判要旨

1 航空法(平成11年法律第160号による改正前)38条1項に基づいて運輸大臣のした飛行場の設置許可処分につき,当該設置許可により生ずる用益制限に伴う損失補償の規定や土地の買取請求等の規定が同法にあることからすれば,同法は飛行場の敷地部分及びその周辺の一定範囲内に存在する土地,建造物等の財産権をそれらが帰属する個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むものと解されるから,当該飛行場の敷地部分の土地又は設置許可に伴い用益制限が生ずる周辺の土地について所有権を有する者及びこれらの土地上に立木を所有する者は,前記処分の取消しを求める原告適格を有するとした事例 2 航空法(平成11年法律第160号による改正前)39条1項5号にいう「所有権その他の使用の権原を(中略)確実に取得することができる」と認められるか否かについては,同法38条1項の設置許可申請時までに得られた飛行場の敷地の任意取得の同意割合,任意取得地の面積,任意取得反対者の数,その意志の強固さの程度,反対理由とその合理性,これに対する世論の反応,当該飛行場の必要性の程度,地元の熱意と協力体制,任意取得に対する申請者の決意の程度,申請者の一連の対応と具体的対策,財政資金状況,過去の同種参考事例等諸般の事情を総合的に比較衡量して,将来における任意取得及び土地収用による取得の可能性を予測,推認し,これらによって飛行場の敷地の権原取得が確実に実現できるという見込みを判断するほかはなく,その比較衡量には高度の裁量性が認められる。 3 航空法(平成11年法律第160号による改正前)38条1項に基づいてされた飛行場の設置許可申請を運輸大臣が許可するに当たり,当該申請に係る飛行場設置計画は,同法施行規則(平成12年運輸省令第42号による改正前)79条1項1号で定める設置基準に適合するとした判断の適否につき,同号は,飛行場の周辺の一定の空間について航空機の離着陸に支障がないように障害物のない状態が確保されることを要求しているが,同号にいう「飛行場の周辺」は,設置許可処分後に同法40条に基づいてされる告示によって示される進入表面,転移表面及び水平表面によって画される範囲を基準として定まり,同号の定める設置基準を充足するには,いわゆる制限表面の上に出る高さの物件が存在しないこと,仮に存在する場合には飛行場の工事完成予定期日までに確実に除去できると認められることが必要であるところ,前記空港のこれに該当する物件の種類,件数及び所在位置並びに障害切土部分の任意取得等の見通し,同法49条3項等の法的手段の存在等にかんがみれば,前記判断に違法な点はないとした事例 4 航空法(平成11年法律第160号による改正前。以下同様)38条1項に基づいて運輸大臣のした飛行場の設置許可処分がにつき,同法39条1項2号にいう「当該飛行場(中略)の設置によって,他人の利益を著しく害することとならない」といえるためには,設置される飛行場の公共性の有無及び程度と,その設置によって空港設置者以外の者が具体的に享受する利益が侵害される程度とを,その侵害に対する補償措置等も含め総合的に比較衡量して判断することが必要であるところ,前記飛行場が設置される県の現状,空港整備の必要性,空港敷地及びその周辺の土地利用状況,設置許可処分後に実施する予定の用地補償,代替農地対策及び地域農業振興対策などの農業対策,その他空港の設置許可申請に至る経緯,空港用地取得の経緯,空港建設反対運動,空港用地取得状況等に照らせば,前記処分は同大臣の有する裁量権を逸脱濫用したものとはいえず,違法とはいえないとした事例

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