裁判例結果詳細

事件番号

平成14(行コ)12等

事件名

各住民票消除処分取消等請求控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成12年(行ウ)第357号等)

裁判年月日

平成14年5月22日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 東京都の特別区の区長がした特定の宗教団体の信者から提出された転入届に基づき調整,記録した住民票の破棄及び住民基本台帳の記録からの抹消が行政処分に当たるとされた事例 2 東京都の特別区の区長がした特定の宗教団体の信者から提出された転入届に基づき調整,記録した住民票の破棄及び住民基本台帳の記録からの抹消処分が違法であるとしてされた同処分の取消請求が,認容された事例 3 東京都の特別区の区長がした特定の宗教団体の信者から提出された転入届に基づき調整,記録した住民票の破棄及び住民基本台帳の記録からの抹消処分が違法であるとしてされた国家賠償請求が,一部認容された事例

裁判要旨

1 東京都の特別区の区長がした特定の宗教団体の信者から提出された転入届に基づき調整,記録した住民票の破棄及び住民基本台帳の記録からの抹消につき,住民票を新たに調製し,これに特定の住民の氏名等を記載する行為,あるいは,既に調製された住民票を全部消除する行為は,その者が当該市町村の選挙人名簿に登録されるか否かを左右する法的効果を有するものであるから,前記各行為は行政処分に当たるとした上,前記抹消等は,有効に存在する住民票の調製,記録という処分の効力を事後的に消滅させるために行われたと認められるから,住民基本台帳法8条に基づく職権による消除と解すべきであるとして,行政処分に当たるとした事例 2 東京都の特別区の区長がした特定の宗教団体の信者から提出された転入届に基づき調整,記録した住民票の破棄及び住民基本台帳の記録からの抹消処分が違法であるとしてされた同処分の取消請求につき,転入の届出があった場合に市町村長が住民票の作成及び住民基本台帳に記録するに当たって審査すべき事項は,転入届に係る居住関係が事実であるかどうかに限られ,当該届出に係る居住関係が事実である限り,市町村長は,その内容に従ってその者の住民票を作成し,住民基本台帳に記録しなければならない義務を負っているものというべきであり,また,住民票を消除すべき場合として住民基本台帳法施行令8条に規定する「住民基本台帳の記録から除くべき事由」についても,実際の居住関係が住民票の記載内容と符号しない場合あるいはこれに準ずる場合に限られるとした上で,区長のした前記処分については,同条に定める住民票を消除すべき事由は認められないとして,前記請求を認容した事例 3 東京都の特別区の区長がした特定の宗教団体の信者から提出された転入届に基づき調整,記録した住民票の破棄及び住民基本台帳の記録からの抹消処分が違法であるとしてされた国家賠償請求につき,同処分は,住民票を消除すべき事由がないのにされたものであるから違法である上に,前記信者を選挙権の行使ができない状態及び国民健康保険による給付も事実上受けられない状態に置いたものであり,また,前記処分は法律の根拠のない差別的な取扱いであることが認められるから,国家賠償法上も違法な行為であり,さらに,区長が前記処分を行うことは適法であると解釈したことについては,当時の総理大臣の答弁書や裁判例及び学説などに照らしても相当の根拠があったということはできないから,区長には同処分を行ったことについて少なくとも過失があるというべきであり,他方,前記信者は,前記のように選挙権を行使できない状態や国民健康保険の被保険者として事実上取り扱われない状態に置かれたほか,日常生活にも支障を来したことなどの事実が認められ,これによって,少なからず精神的苦痛を受け,心理的不安を抱いたものと推認されるとして,前記請求を一部認容した事例

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