裁判例結果詳細

事件番号

平成14(行ク)3

事件名

執行停止申立事件

裁判年月日

平成14年3月1日

裁判所名

東京地方裁判所

分野

行政

判示事項

我が国のビザの発給を受けず不法入国したとして退去強制令書発付処分を受けたアフガニスタン人がした,同処分の取消しを求める訴えを本案とする同処分の執行停止の申立てが,同令書に基づく収容部分の執行も含め,認容された事例

裁判要旨

我が国のビザの発給を受けず不法入国したとして退去強制令書発付処分を受けたアフガニスタン人がした同処分の取消しを求める訴えを本案とする同処分の執行停止の申立てについて,行政事件訴訟法25条2項の「回復の困難な損害」とは,処分を受けることによって被る損害が,原状回復又は金銭賠償が不能であるとき,若しくは金銭賠償が一応可能であっても,損害の性質,態様にかんがみ,損害がなかった原状を回復させることが社会通念上容易でないと認められる場合をいうとした上,同人が収容されていることによって生じる損害は,後の金銭賠償が不可能なものであるか,金銭賠償が一応可能であっても,社会通念上損害がなかった原状を回復させることが容易でない損害であると認められ,また,同人は難民条約31条所定の難民に該当し,引き続き難民条約上の保護が与えられるべき地位を有していたと認められるから,仮に前記令書によって収容されると同条約31条2項による第三国の入国許可を得るための活動が阻害されることに伴う精神的苦痛,回復し難い損害を受けるおそれがあり,前記令書に基づき送還された場合には,それ自体が重大な損害となるほか,訴訟追行が著しく困難となるなど回復困難な損害を被るものと認められるとし,次いで,行政事件訴訟法25条3項の「本案について理由がないとみえるとき」については,本案の慎重な判断を経ずして処分権者の裁量権の逸脱濫用がなかったと断ずることが困難な場合には,この要件に充たすものというべきであるとした上,前記令書の送還部分について,前記令書が難民条約のノン・ルフールマン原則に違反し取り消されるべきであるとの主張が直ちに失当ということはできず,「本案について理由がないと見えるとき」に該当せず,また,前記令書の収容部分についても,難民に該当する可能性があるものについて,不法入国や不法滞在に該当すると疑うに足りる相当な理由があることをのみをもって退去強制令書を発付して収容を行うことは同条約31条2項に違反するといわざるを得ないことからするば,行政事件訴訟法25条3項の「本案について理由がないとみえるとき」に該当するとは認められず,かつ同項の「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」に該当する事情もないとして,前記執行停止の申立てを,収容部分の執行を含め,認容した事例

全文

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