裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成11(行ウ)7
- 事件名
各給水条例無効確認等請求事件
- 裁判年月日
平成13年11月27日
- 裁判所名
甲府地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額に設定している高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)の別表は,同人らを不当に差別するものであるとして提起した同別表の無効確認の訴えが,適法とされた事例 2 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,町営水道の一時的な休止を認める対象者から別荘所有者を除外している「高根町簡易水道事業給水条例及び施行規則に関する内規」は,同人らを不当に差別するものであるとして提起した同内規の無効確認の訴えが,不適法とされた事例 3 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,水道事業者である町が高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)を改正して定めた同条例の新たな別表は,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額とするものであって無効であるとして,同別表の定める基本料金と従前の基本料金との差額に関して,未払水道料金についてはその債務不存在確認を求め,支払済みの水道料金相当額についてはその不当利得返還又は不法行為に基づく損害賠償を求めた各請求が,いずれも棄却された事例 4 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,水道事業者である町が高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)を改正して定めた同条例の新たな別表は,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額とするものであって無効であるとして,町に対してした未払い水道料金があることを理由とする給水停止の差止請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額に設定している高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)の別表は,同人らを不当に差別するものであるとして提起した同別表の無効確認の訴えにつき,給水契約という継続的供給契約においては,日々料金債務が発生しているのであるから,個々の水道料金について債務不存在確認を求めることはう遠であり,より抜本的な紛争解決のためには,水道法14条1項に基づいて定められた約款である供給規程自体の無効確認を求めることも許されるものと解され,また,水道事業者が地方公共団体である場合に,水道料金について定めた条例は,地方公共団体以外の水道事業者が定める供給規程と何ら異ならず,その実質は単なる約款にすぎないから,条例であることをもって,その無効確認の訴えが法律上の争訟に当たらないということはできず,さらに,給水契約において,水道事業者である地方公共団体は,私法上の契約における一方当事者にすぎず,その行為は何ら権力的作用を有するものではないから,民事訴訟により約款たる条例の効力を争うことができるとして,前記訴えを適法とした事例 2 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,町営水道の一時的な休止を認める対象者から別荘所有者を除外している「高根町簡易水道事業給水条例及び施行規則に関する内規」は,同人らを不当に差別するものであるとして提起した同内規の無効確認の訴えにつき,当該内規は,町の行う水道事業における内部規則にすぎず,需用者を直接拘束するものではないが,それにより別荘については一定期間水道を使用しない場合であっても給水停止が認められないという効果が及ぶのであるから,同内規も水道事業者である町が水道法14条1項に基づいて定めた供給規程の一部として給水契約の内容になるものと解されるから,民事訴訟によりその効力を争い得るものというべきであるとした上で,前記別荘所有者らは,町に対し具体的に給水の一時休止を求めたわけではないので,同人らの権利又は法的地位に対する不安ないし危険はいまだ抽象的なものにすぎず,判決によって解決すべきほどに紛争が成熟しているとはいえず,したがって,前記訴えは,民事訴訟における確認の利益を欠くものであって,不適法であるとした事例 3 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,水道事業者である町が高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)を改正して定めた同条例の新たな別表は,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額とするものであって無効であるとして,同別表の定める基本料金と従前の基本料金との差額に関して,未払水道料金についてはその債務不存在確認を求め,支払済みの水道料金相当額についてはその不当利得返還又は不法行為に基づく損害賠償を求めた各請求につき,同町内における別荘全体の年間を通した水道の使用量は契約者全体の5パーセント前後であり,その使用量を基に水道料金を算出すると,別荘が夏期等に一時的に使用する水量及びそれに見合った給水施設のかなりの割合を別荘所有者以外の住民が年間を通して実質的に負担することとなり,かえって別荘所有者とそれ以外の住民との公平が図られず,また,別荘の水道使用料は年間を通しておおむね基本水量内に収まっているのであるから,別荘所有者に年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させる方法として,基本料金を別荘以外の住民に比べて高額にして調整することも,水道事業者の政策的料金体系として許されないものではないとした上,前記別表が別荘について定める基本料金は,町の簡易水道事業の特殊性,別荘の水道使用の特殊性に照らしてもなお合理的な範囲内にあるから,同別表が別荘の基本料金をそれ以外と比べて高額に設定していることは,憲法14条1項に違反する不当な差別には当たらないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例 4 町との間で給水契約を締結しているが住民基本台帳には登録していない別荘所有者らが,水道事業者である町が高根町簡易水道事業給水条例(昭和63年高根町条例第8号)を改正して定めた同条例の新たな別表は,別荘所有者の水道料金を他の住民と区別してより高額とするものであって無効であるとして,町に対してした未払い水道料金があることを理由とする給水停止の差止請求につき,給水契約における水の継続的供給と水道料金の支払とは,双務契約における対価的牽連関係にあり,水道事業者は需用者に料金不払があるときは給水を停止することができるものと解され,水道法15条3項はこれを明確にした規定といえ,この理は水道事業者が地方公共団体である場合であっても異ならないとした上で,町が同項及び前記条例の規程に基づいて給水停止をすることが比例原則違反ないし権利の濫用に当たり許されないような具体的事情は認められず,これを将来にわたって禁止することはできないとして,前記請求を棄却した事例
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