裁判例結果詳細

事件番号

平成11(行ウ)8

事件名

建築基準法第42条2項道路不存在確認請求事件

裁判年月日

平成13年10月30日

裁判所名

甲府地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 建築物の敷地及びその隣地の北側に接する道と同隣地の西側に接する道について,告示をもって包括して指定する方式でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定が,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとされた事例2 建築物の敷地及びその隣地の北側に接する道と同隣地の西側に接する道について,告示をもって包括して指定する方式でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定の不存在確認訴訟につき,前記建築物の居住者の原告適格が,肯定された事例3 建築物の敷地及びその隣地の北側に接する道と同隣地の西側に接する道について,告示をもって包括して指定する方式でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定の不存在確認請求が,認容された事例

裁判要旨

1 建築物の敷地及びその隣地の北側に接する道と同隣地の西側に接する道について,告示をもって包括して指定する方式でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定につき,同指定は,不特定多数の者に対して向けられたものであるとはいえ,同法施行日以後,都市計画区域内にある幅員4メートル未満1.8メートル以上の道で同項の要件を具備する土地の所有者等に対し,同法44条,45条等の建築基準法上の制約を課す限度において,一定の法状態の変動を生じさせるものであることは否定できないところ,その法状態が一般的抽象的なものであるとしても,前記指定処分自体を争わなければ他に適切な救済の途が閉ざされるなどの特段の事情がある場合には,行政処分であると解するのが相当であるとした上,前記建築物の居住者は,同敷地の隣地上の建築物の建築確認処分の取消訴訟の中で,前記指定処分が存在しないことを主張しているが,同建築物の工事が完了すれば,訴えの利益を欠くことになり,ほかにこれを争う適切な争訟形態を見出しがたいことに照らすと,前記特段の事情があるとして,前記道路の指定が,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとされた事例2 建築物の敷地及びその隣地の北側に接する道と同隣地の西側に接する道について,告示をもって包括して指定する方式でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定の不存在確認訴訟につき,行政事件訴訟法36条所定の「法律上の利益を有する者」とは,同法9条のそれと同義に解するのが相当であり,同条所定の「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の仲に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益も法律上保護された利益に当たるが,当該行政法規が,前記趣旨を含むか否かは,当該行政法規の趣旨,目的,当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容,性質等を考慮して判断すべきであるとした上で,建築基準法第3章の規定における「道路」は,建築物の敷地を利用することについて,防火,避難,衛生,安全,通行等に支障を生ずることのないよう,原則としてその幅員は4メートル以上あることが要求されているところ,幅員が4メートルに満たない道についても「道路」に当たるものと取り扱われ,それを前提に同法43条1項の接道義務を充足するものとして建築物が建築され,その建築物に火災が発生した場合における被害は,当該建築物の類焼により一定の周辺地域の住民に直接的に及ぶことが予想されることなどに照らすと,同法42条,43条等の規定は,防火,避難,衛生,安全,通行等に支障のない秩序ある健全な市街地を形成するという一般的公益の保護を図るにとどめず,接道義務を充足しない建築物に火災が発生した場合に当該建築物の類焼により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域の住民の生命,身体等の安全を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解するのが相当であるとした上,前記建築物とその敷地の隣地上の建築物とは,水路及びブロック塀を挟んで数メートルの距離にあることが認められ,前記建築物の居住者は,前記隣地上の建築物に火災が生じた場合,その類焼による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住しているというべきであるとして,前記建築物の居住者の原告適格を肯定した事例3  建築物の敷地及びその隣地の北側に接する道と同隣地の西側に接する道について,告示をもって包括して指定する方式でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定の不存在確認請求につき,前記北側の接道や西側の接道について前記指定が存在するといえるためには,同法施行日時点において,両接道が,いずれも現に建築物が建ち並んでいる道であり,かつ,その幅員が4メートル未満1.8メートル以上であったことの主張立証が必要であり,また,建築物が建ち並んでいるといえるためには,少なくとも,当該道のみによって接道義務を充足する建築物が2戸以上存在することの主張立証が必要であるところ,現況の地形や過去の建築確認が積み重ねられた事実から,同法施行日における道の存在を推認することには無理があり,また,同法施行日において何らかの道があったとしても,現に建築物が建ち並んでいる道であったことを認めることはできないとして,前記請求を認容した事例

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