裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成8(行ウ)9
- 事件名
損害賠償請求事件
- 裁判年月日
平成13年9月7日
- 裁判所名
名古屋地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 市が事業団と協定を締結して委託した工事のうち前記事業団が外注した電気設備工事及び自家発電設備工事に係る工事請負代金が,前記事業団及び業者らによる談合行為により不当につり上げられた結果,市は,談合がなければ形成されたであろう請負代金額と現実の請負代金額との差額相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき前記事業団及び前記業者らに対してされた損害賠償請求及び同項3号に基づき市長及び市上下水道局長に対してされた前記事業団及び前記業者らに対する損害賠償請求権の行使を怠っていることの違法確認請求の住民訴訟に先立つ住民監査請求につき,地方自治法242条2項の監査請求期間の制限規定の適用はないとして,前記住民監査請求が適法とされた事例 2 地方自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求と併合して提起された同項3号に基づく怠る事実の違法確認請求が,適法とされた事例 3 市が事業団と協定を締結して委託した工事のうち前記事業団が外注した電気設備工事及び自家発電設備工事に係る工事請負代金が,前記事業団及び業者らによる談合行為により不当につり上げられた結果,市は,談合がなければ形成されたであろう請負代金額と現実の請負代金額との差額相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき前記事業団及び前記業者らに対してされた損害賠償請求が,認容された事例 4 市が事業団と協定を締結して委託した工事のうち前記事業団が外注した電気設備工事及び自家発電設備工事に係る工事請負代金が,前記事業団及び業者らによる談合行為により不当につり上げられた結果,市は,談合がなければ形成されたであろう請負代金額と現実の請負代金額との差額相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき市上下水道局長に対してされた前記事業団及び前記業者らに対する損害賠償請求権の行使を怠っていることの違法確認請求が,認容された事例
- 裁判要旨
1 市が事業団と協定を締結して委託した工事のうち前記事業団が外注した電気設備工事及び自家発電設備工事に係る工事請負代金が,前記事業団及び業者らによる談合行為により不当につり上げられた結果,市は,談合がなければ形成されたであろう請負代金額と現実の請負代金額との差額相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき前記事業団及び前記業者らに対してされた損害賠償請求及び同項3号に基づき市長及び市上下水道局長に対してされた前記事業団及び前記業者らに対する損害賠償請求権の行使を怠っていることの違法確認請求の住民訴訟に先立つ住民監査請求につき,契約法理に基づく債権の発生原因事実と不法行為に基づく債権のそれとは必ずしも重なり合うものではなく,不法行為に基づく損害賠償請求権の発生原因においては,協定の締結や支出負担行為,支出命令等の特定の財務会計行為は損害発生に至る因果関係の流れとして現れるにすぎず,少なくとも,特定の財務会計行為が違法,無効であることに基づいて発生する請求権の発生原因事実とは完全に一致するものではなく,摘示された談合という共同不法行為に基づく損害賠償請求権の発生原因事実から,直ちに前記協定の違法,無効に基づく請求権の発生を読みとれる関係にないというべきであり,比喩的に表現すれば,両者の請求権は「表裏一体の関係」にないから,前記住民監査請求はいわゆる真正怠る事実についてのものであって,同法242条2項本文の規定の適用はないとして,前記住民監査請求を適法とした事例 2 地方自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求と併合して提起された同項3号に基づく怠る事実の違法確認請求につき,4号請求における訴訟物が地方公共団体の有する実体上の請求権であるのに対し,3号請求は怠る事実の違法性の法律状態が訴訟物であるから,両請求は訴訟物を異にするし,客観訴訟である住民訴訟に,主観訴訟において形成された民事訴訟法上の確認の利益という概念をそのまま当てはめることはできないから,3号請求と4号請求の同時存立の可否は,法が定める範囲でのみ訴えを提起できる客観訴訟の一類型としての3号請求が,いかなる条件の下で訴えの提起を認められていると解するかによって決せられるべきところ,同項は住民訴訟の4つの請求形式に優先順位を定めておらず,複数の請求を許さない旨の定めも存しないこと,実質的に見ても,住民による4号請求の提起と,3号請求の住民勝訴により地方公共団体自らが請求権を行使する場合とでは,その法律上の効果を異にし,両請求のどちらが有効適切であるかは個々の事案で異なるから,両請求のいずれかを選択するか,あるいは両方を提起するかは住民の意思にゆだねられていると考えられること,長などの執行機関等は,4号請求訴訟の係属中に訴訟参加等の手続をとらない以上,その不作為が違法と評価されてもやむを得ないことなどからすると,両請求を並立して提起することを認めるのが相当であるとして,前記請求を適法とした事例 3 市が事業団と協定を締結して委託した工事のうち前記事業団が外注した電気設備工事及び自家発電設備工事に係る工事請負代金が,前記事業団及び業者らによる談合行為により不当につり上げられた結果,市は,談合がなければ形成されたであろう請負代金額と現実の請負代金額との差額相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項4号後段に基づき前記事業団及び前記業者らに対してされた損害賠償請求につき,前記事業団及び業者らは,共謀の上,組織的,継続的に入札談合を行うことにより,公正な自由競争を排除し,予定価格に極めて近い価格をもってあらかじめ決めておいた落札予定者に入札させ,落札価格を不当に高額なものとして外注契約代金をつり上げていたものであり,かつ前記事業団は市から前記委託を受ける際,入札談合によって不当に高額な価格で工事を外注する意図でありながらそれを秘し,あたかも公正な自由競争原理に従って工事を外注施工し,適正な費用のみを市に負担させるかのように偽って前記協定等を締結したものであって,全体として私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律3条の不当な取引制限に該当すると同時に,民事上も明らかに自由競争の枠を逸脱した違法な行為であり,市は,談合行為がなければ指名業者間の公正な競争を経て入札された場合に形成されたであろう契約金額と現実の契約金額との差額相当額の損害を被ったと解されるところ,入札談合の事例における損害は,指名競争入札における落札価格を形成する要因は多種多様であって,影響力についても公式化することができず,その性質上,金額算定が極めて困難というべきであるから,民事訴訟法248条を適用して市が被った損害額を認定するのが相当であるとした上,談合行為の態様及び入札経過,契約金額等一切の諸事情を総合考慮し,前記損害額は前記現実の各契約金額の5パーセントないし8パーセントと認めるのが相当であるとして,前記請求を認容した事例 4 市が事業団と協定を締結して委託した工事のうち前記事業団が外注した電気設備工事及び自家発電設備工事に係る工事請負代金が,前記事業団及び業者らによる談合行為により不当につり上げられた結果,市は,談合がなければ形成されたであろう請負代金額と現実の請負代金額との差額相当額の損害を被ったとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき市上下水道局長に対してされた前記事業団及び前記業者らに対する損害賠償請求権の行使を怠っていることの違法確認請求につき,地方公共団体が有する債権については,その長がこれを行使すべき義務を負い,行使するか否かの裁量権を有しないから,長が正当な理由なく相当な期間債権を行使しないときは,違法に財産の管理を怠る事実が成立するものと解されるところ,市は,前記業者ら及び事業団による共同不法行為に基づき損害賠償請求権を有していると認められるにもかかわらず,課徴金納付命令及び刑事事件の有罪判決の後もこれを行使しておらず,また,前記請求権の行使を怠っていることについて,これを正当化するに足りる事情は何ら認められないから,前記請求権の行使を怠ることは違法というべきであるとして,前記請求を認容した事例
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