裁判例結果詳細

事件番号

平成12(行コ)329

事件名

固定資産評価審査決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成9年(行ウ)第82号)

裁判年月日

平成13年8月29日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 固定資産課税台帳に登録された宅地の固定資産評価額に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消請求が,認容された事例 2 固定資産課税台帳に登録された宅地の固定資産評価額に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消訴訟につき,前記決定の一部のみが取り消された事例

裁判要旨

1 固定資産課税台帳に登録された宅地の固定資産評価額に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消請求につき,固定資産税の課税標準又はその算定基礎となる土地の「適正な時価」とは,正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうが,課税対象となる土地が極めて大量に存在することから,限りある人的資源により,時間的制約の下で,個々の土地について個別的,具体的に鑑定評価をすることは困難であることに照らすと,少なくとも評価額が客観的時価を超えるという事態が生じないように,あらかじめ減額した数値をもって計算の基礎となる標準宅地の「適正な時価」として扱うことは合理的であるから,公示価格の算定と同様の方法で評価した標準宅地の価格のおよそ7割をもって,その適正な時価として取り扱うこととする,いわゆる7割評価通達に従って土地を評価すること自体は違法ではないが,地方税法は,登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回ることまでも許容するものではないから,登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回るときは,その限度で登録価格の決定は違法になると解した上,前記決定は,標準宅地の道路との接面状態がよくないという減価要因を全く考慮しておらず,7割通達に従った場合に生ずる評価誤差の許容範囲が3割あるものの,標準宅地の実際の地価下落率を考慮すると,もはや許容範囲にないから,登録価格は当該土地の客観的時価を上回っているとして,前記請求を認容した事例 2 固定資産課税台帳に登録された宅地の固定資産評価額に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消訴訟につき,地方税法は,登録価格についての不服申立ての方法として裁決主義を採用し,取消訴訟において,委員会の決定全体の是非のみが争われるだけでなく,適正な価格がいくらであるかが争点とされることも予定していることからすると,取消訴訟において,評価自体の違法を理由として評価額の一部の取消しを求める訴訟形態を許容していると解されること,一部取消しを認めないとすると,判決において価格に適正でない部分があるとの理由で全部勝訴したとしても,判決理由中で認定された価格に不服がある当事者には不服申立ての方法がなく,その後,当該判決に従った前記委員会の決定について,再度取消訴訟を提起しなければならないのであって,いたずらに紛争の解決を遅延させて,当事者に負担を負わせる結果となることなどからすると,審査決定の全部を取り消すことができるのは,委員会の決定がおよそ評価額として不適当であり,その評価を改めて行う必要がある等の事由がある場合であって,取消事由があるものの,それが評価額の一部に止まる場合には,一部取消しをすべきであるとして,前記決定のうち,適正な価格を超える部分について審査の申出を棄却した部分のみを取り消した事例

全文

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