裁判例結果詳細

事件番号

平成12(行コ)332

事件名

固定資産評価審査決定取消請求控訴事件(原審 東京地方裁判所平成8年(行ウ)第203号)

裁判年月日

平成13年8月27日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 固定資産課税台帳に登録された宅地の固定資産評価額に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消請求につき,前記評価額は賦課期日における当該宅地の正当な手法により算定された客観的価格を超える額であり,同客観的価格を超える部分は違法であるとして,前記取消請求が,一部認容された事例 2 固定資産評価審査委員会のした審査決定の取消請求訴訟において,前記決定のうち適正な時価を超える価格を認定した部分に違法がある場合に,前記決定の全部を取り消した原判決の主文が,一部取消判決の主文に更正された事例

裁判要旨

1 固定資産課税台帳に登録された宅地の固定資産評価額に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消請求につき,賦課期日における適正な時価の算定に当たり,評価基準による評価も,大量処理のための方法であって,その評価額と客観的時価との間に誤差が生じるとことも考えられ,さらに,将来の地価の変動を予想することの困難さからすれば,少なくとも評価額が客観的時価を超えるという事態を生じさせないようにするために,「適正な時価」をあらかじめ控えめに評定することは,課税処分の謙抑性の観点から許容されると解されるところ,宅地の評価に当たっては地価公示価格等から求められた価格の70パーセント程度をその適正な時価として扱うとするいわゆる7割評価通達(平成4年1月22日自治固第3号)の内容は,その本来の趣旨が,土地基本法16条の趣旨を踏まえて地価公示価格等の公的土地評価の均衡化,適正化を目指すものであって,賦課期日までの時点修正を直接の目的とするものではないものの,これが法の禁ずるものということはできないのであり,同通達に従った評価にも違法性はないが,地価が下落した結果,7割評価という修正を加えられた価格をもってしても評価額が賦課期日における客観的時価を超える事態となった場合には,この超過部分は違法なものとなるとした上,前記宅地の登録価格は「適正な時価」として算定された客観的価格を超えるものであるから同客観的価格を超える部分は違法であるとして,前記取消請求を一部認容した事例 2 固定資産評価審査委員会のした審査決定の取消請求訴訟において,前記決定のうち適正な時価を超える価格を認定した部分に違法がある場合に,前記決定の全部を取り消した原判決の主文につき,地方税法は,同法435条により前記審査委員会が審査決定をした場合における登録価格等の修正手続を規定しているのに対し,確定判決があった場合の登録価格等の修正手続を規定していないので,裁判所としては,同審査委員会の審査決定の一部に違法がある場合でも,常に審査決定の全部を取り消して,同審査委員会に判決の判断に従った審査決定を改めて行わせ,この審査決定により,市町村長に前記登録価格等の修正手続による登録価格等の修正をさせるという見解も成り立ち得るが,前記訴訟においては,前記審査委員会が認定した登録価格の適否を判断するのであるから,適正な時価を超える認定部分を特定して,これのみを取り消すことも可能であり,また,このような一部取消判決がされたとしても,取消判決の拘束力を規定した行政事件訴訟法33条1項によって,市町村長は審査決定の場合と同様の措置を義務付けられるものと解されるのであるから,前記審査委員会の審査決定を介在させる必要はなく,介在させないことによって特に不都合が生ずるとも考えられないというべきであり,むしろ,一部取消判決をすることで紛争が早期に解決することにもなるから,違法の理由が審査手続の違法である場合や内容の違法であっても例外的に前記審査委員会に審査のやり直しを求めるのが相当である場合を除いては,審査決定のうちの違法な部分のみを取り消せば足りるなどとして,前記原判決の主文を一部取消判決の主文に更正した事例

全文

全文

ページ上部に戻る