裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
昭和60(行コ)68
- 事件名
東海第二発電所原子炉設置許可処分取消請求控訴事件(原審・水戸地方裁判所昭和48年(行ウ)第19号)
- 裁判年月日
平成13年7月4日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前)23条に基づいて内閣総理大臣のした原子炉設置許可処分につき,当該原子炉施設から約20キロメートル以内に居住する住民は,同処分の取消しを求める訴えの原告適格を有するが,後に100キロメートル余の遠隔地に転居するに至った者は,前記訴えの原告適格を有しないとした事例 2 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前)23条に基づく原子炉設置の許可処分の取消訴訟の係属中に当該原子炉について設置変更許可処分がされ,現実に同原子炉の施設及び設備が変更された場合に,同変更許可処分の実体的違法事由の有無を前記訴訟で審理及び判断することができるとした事例 3 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前)23条に基づく原子炉設置許可処分の取消請求が,同処分における原子炉施設の安全性に関する審査に不合理な点があるとはいえないなどとして,請求を棄却した事例
- 裁判要旨
1 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前)23条に基づいて内閣総理大臣のした原子炉設置許可処分につき,当該原子炉施設から約20キロメートル以内に居住する住民は,原子炉の設置許可の際に行われる前記法律24条1項3号所定の技術的能力の有無及び4号所定の安全性に関する各審査に過誤,欠落がある場合に起こり得る事故等による災害により,直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域内に居住する者であるから,前記処分の取消しを求める訴えの原告適格を有するが,後に100キロメートル余の遠隔地に転居するに至った者は,同原子炉施設における事故等がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される地域内に居住する者には該当しないこととなったから,前記訴えの原告適格を有しないとした事例 2 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前)23条に基づく原子炉設置の許可処分の取消訴訟の係属中に当該原子炉について設置変更許可処分がされ,現実に同原子炉の施設及び設備が変更された場合につき,原子炉施設全体の安全性の問題に関しては,原子炉施設においては施設及び設備の各部分が相互に補完しあって機能していることからその施設及び設備が変更された以上,変更後の施設及び設備を除いてその原子炉施設の安全性の有無を判断することはできないこと等から,前記変更許可処分によって変更を許可された後の内容がそのまま当該原子炉に係る原子炉設置許可処分の処分内容となるものと解するのが相当であるとして,前記訴訟においては,前記変更許可処分に係る実体的違法事由の有無を審理及び判断することができるとした事例 3 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前)23条に基づく原子炉設置許可処分の取消請求につき,行政事件訴訟法10条1項の趣旨は,およそ処分の取消しを求める者の法律上の利益の保護という観点とは無関係に,もっぱら他の者の利益等を保護するという観点から当該処分の要件として定められているにすぎない事項については,そのような要件に違背しているとの理由では当該処分の取消しを求めることはできないとすることにあると解され,不特定多数者の一般的公益保護という観点から設けられた処分要件であっても,それが同時に当該処分の取消しを求める者の権利,利益の保護という観点とも関連する側面があるようなものについては,その処分要件の違背を当該処分の取消理由として主張することは何ら妨げられるものではないというべきであり,このような観点からみると,前記法律24条1項各号の定める各要件の存否は,いずれも,前記取消請求の訴訟における審理,判断の対象に含まれるとした上,前記原子炉における使用済み燃料から抽出されるプルトニウムが平和目的以外に利用される可能性がありうるというだけで前記処分が前記法律24条1項1号に反するということはできず,使用済み燃料の再処理あるいは固体廃棄物の処分方法が同項2号に反するとはいえず,同処分は同項3号の経理的基礎及び技術的能力に関する要件との関係において違法とすべき事由があるとは認められず,同処分における同項4号の要件適合性の審査に不合理な点があるとはいえないとして,前記請求を棄却した事例
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