裁判例結果詳細

事件番号

平成7(行ウ)311

事件名

減反政策差止等請求事件

裁判年月日

平成13年4月27日

裁判所名

東京地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 米の生産者又は消費者である者らが生存権的人格権に基づいてした,国又は国の機関がいわゆる減反政策に基づいてする当該年度の生産調整対象水田面積の目標面積の決定等の差止請求が,棄却された事例 2 米の生産者又は消費者である者らが米を作る権利としての人格権に基づいてした,国又は国の機関がいわゆる減反政策に基づいてする当該年度の生産調整対象水田面積の目標面積の決定等の差止請求が,棄却された事例 3 国のいわゆる減反政策に基づいて実施された生産調整により,消費者らとの関係においては生存権を,生産者らとの関係においては職業選択の自由等を侵害されたとして,米の消費者又は生産者である者らがした国家賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

1 米の生産者又は消費者である者らが生存権的人格権に基づいてした,国又は国の機関がいわゆる減反政策に基づいてする当該年度の生産調整対象水田面積の目標面積の決定等の差止請求につき,いまだ人格権侵害の事実が発生していない段階でこれを予防するために差止請求権を行使するには,請求者がその主張する人格権侵害を受けることもあり得るという抽象的な可能性があるだけでは足りず,その侵害発生の蓋然性が客観的にみて極めて大きいものと認められることが必要であるとした上,米の生産調整は少なくとも法律的には個々の生産者に対して直接的な強制力を有するものではないし,現時点においては,生産調整が直ちに近い将来における米の自給率の大幅な低下をもたらす蓋然性が客観的にみて明らかであるとまではいい難く,また,仮に,近い将来に我が国が米の自給が困難な状況に陥ったとしても,ガット・ウルグアイ・ラウンド等により,我が国に米の更なる輸入が求められている国際的な状況に照らすと,このことが,直ちに我が国の国民の生存に必要な食糧の枯渇という事態に結びつくものでないことは明らかであり,したがって,政府が減反政策を政策として実行し,国が前記目標面積の決定等をしたとしても,それによる生命,身体等に対する侵害発生の蓋然性が客観的にみて極めて大きいと認めることはできないとして,前記差止請求を棄却した事例 2 米の生産者又は消費者である者らが米を作る権利としての人格権に基づいてした,国又は国の機関がいわゆる減反政策に基づいてする当該年度の生産調整対象水田面積の目標面積の決定等の差止請求につき,生産調整においては,そもそも米を作ることそれ自体が法的に制限されるものではなく,需給の均衡等の観点から,一定の面積について生産調整が要請されるものにすぎず,これに従わなかった場合についても,法律上,生産した米の出荷の道が閉ざされるわけではないし,事実上も米を作ることそれ自体が禁止されるという効果が生ずるわけではなく,政府買入れが認められない,補助金の交付を受けられないといった不利益を受けるにすぎないから,職業選択の自由それ自体が侵害されているとはいえず,前記不利益をもって人格的生存に必要不可欠な権利が侵害されたともいえないとして,前記差止請求を棄却した事例 3 国のいわゆる減反政策に基づいて実施された生産調整により,消費者らとの関係においては生存権を,生産者らとの関係においては職業選択の自由等を侵害されたとして,米の消費者又は生産者である者らがした国家賠償請求につき,生産調整は米の需給の均衡を図るために実施されているものであり,その実施方法や規模等に照らすと,生産調整を実施することが消費者らの生存権を侵害するものと評価することは困難であるし,また,生産調整は,米作農家という職業を選択すること自体を制限するものではなく,原則として政府が米を買い入れその流通を管理するという特殊な食糧管理制度の下で,需給の均衡を図るためには,流通を管理する政府の側で,需要に見合った生産量を調整する必要があることから,一定の割合で,米の需要に見合うように生産量を削減し,それを,各生産者に割り振るというものであるから,それ自体,国家が国民の食糧を確保する見地から食糧の流通を管理する食糧管理制度の下で必要とされるものであり,職業選択について立ち入るものではないことをも考えると,生産者らの職業選択の自由を侵害するものとはいえないなどとして,前記請求を棄却した事例

全文

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