裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成8(行ウ)130
- 事件名
固定資産評価審査決定取消請求事件
- 裁判年月日
平成12年11月17日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 固定資産課税台帳に登録された宅地の固定資産評価額に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消請求が,認容された事例 2 固定資産評価審査委員会のした審査決定の取消請求訴訟において,同決定の全部の取消しとともに同決定のうち適正な時価を超える価格を認定した部分の取消しを求めた場合につき,前記各請求は前年度の固定資産課税台帳の登録価格を上回る点において前記委員会の決定には違法があると主張して,前記決定の取消しを求めているものであり,結局同一の請求であるとした事例
- 裁判要旨
1 固定資産課税台帳に登録された宅地の固定資産評価額に関する審査申出を棄却した固定資産評価審査委員会の審査決定の取消請求につき,課税対象となる土地は極めて大量に存在することから,限りある人的資源により,時間的制約の下において大量の土地について可及的に適正な時価を評価する技術的方法と基準を規定した固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号)による評価方法がとられているが,評価基準による評価方法には誤差が生じるおそれがあるから,少なくとも評価額が客観的時価を超える事態が生じないように,あらかじめ減額した数値をもって計算の基礎となる標準宅地の「適正な時価」として扱うことは合理的であって,平成6年度の評価替えに当たり,公示価格の算定と同様の方法で評価した標準宅地の価格の7割程度の価格をもって適正な時価として扱うとのいわゆる7割評価通達(平成4年自治固第3号自治事務次官通達)には合理性が認められ,同通達に従った評価を行ったことに違法はないが,このような評価方法は前記制約の下で可及的に「適正な時価」に接近するための方法として許容されているものであり,登録価格が賦課期日における対象土地の客観的時価を上回ることまでも許容するものではないから,結果としての登録価格が賦課期日における同土地の客観的時価を上回るときは,その限度で登録価格の決定は違法になるというべきところ,前記宅地における標準宅地の平成5年1月1日から平成6年1月1日までの地価下落率は,前記通達に従った場合に生ずる3割の評価誤差の許容範囲を超え,前記標準宅地の地価の具体的な下落率まで認定することは困難であるが,賦課期日である平成6年1月1日における前記標準宅地の適正な時価は少なくとも前記固定資産評価審査委員会が認定した価格を下回ることは明らかであるから,前記決定は違法であるとして,前記取消請求を認容した事例 2 固定資産評価審査委員会のした審査決定の取消請求訴訟において,同決定の全部の取消しとともに同決定のうち適正な時価を超える価格を認定した部分の取消しを求めた場合につき,前記取消訴訟の対象である固定資産評価審査委員会の決定は,固定資産課税台帳に登録された一定の事項についての審査申出人の不服申立てに対する同委員会の応答としてされるものであって,同決定において判断された価格は,基準年度に係る賦課期日における当該固定資産の適正な時価という一個の評価的事実であるから,地方税法は,同価格を可分なものであるとして,その一部に関する部分のみが取消訴訟において争われ,残部が別途に確定するという事態は予定していないというべきであり,仮に前記委員会の決定が可分なものであって,その一部のみの取消しを訴求することが認められるとすると,請求が認容された場合には,同委員会は審査申出に対して応答すべき義務の履行として改めて当該部分についての決定を行うべきこととなるが,あらたな決定と訴訟の対象とならなかった決定の残部の両方が存在することとなって,これらの間に論理的な整合がなくなり,また地方税法には,判決の結果に基づいて,直ちに市町村長が固定資産課税台帳に登録された価格等を修正すべき事態が生じることを予定した規定がないことから,同法は,取消訴訟において固定資産評価審査委員会の決定のうち価格の認定誤りがあると判断された場合には,改めて同委員会による決定がされることを前提としているというべきであるとし,また前記各請求において,違法事由として主張されていることは,いずれも,基準時における当該土地の適正な時価と考える価格を前記委員会の決定した価格が上回るという点にあり,違法事由が認められる場合に,いずれの請求を認容するかを裁判所にゆだね,前記適正な時価を超える価格を認定した部分の取消しを求める請求に固執するものではないことを明らかにしていることからすると,前記各請求は,前年度の固定資産課税台帳の登録価格を上回る点において前記委員会の審査申出に対する決定には違法があると主張して,同決定の取消しを求めているのであり,結局同一の請求であるとした事例
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