裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
行政事件
- 事件番号
平成11(行ウ)124
- 事件名
損害賠償請求事件
- 裁判年月日
平成12年10月26日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 都が信用組合協会に対し,信用組合の経営破綻処理に係る20億円の補助金を交付したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記補助金の交付当時の副出納長個人及び出納長室出納課長個人に対してされた損害賠償を求める訴えが,いずれも却下された事例 2 都が信用組合協会に対し,信用組合の経営破綻処理に係る補助金を交付したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記補助金の交付当時の出納長個人に対してされた損害賠償請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 都が信用組合協会に対し,信用組合の経営破綻処理に係る20億円の補助金を交付したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記補助金の交付当時の副出納長個人及び出納長室出納課長個人に対してされた損害賠償を求める訴えにつき,前記補助金の支出の権限を法令上本来的に有するものは出納長であり,東京都事案決定規程4条2項に基づいて定められた出納長室事案決定実施細目には,1億5000万円以上の支出負担行為に係る支出命令の審査に関する事案決定は出納長が行うことと定められているから,副出納長及び出納課長には前記補助金の支出に関する事案決定権限がなく,同人らは地方自治法242条の2第1項4号に規定する「当該職員」に当たらないとして,前記訴えをいずれも却下した事例 2 都が信用組合協会に対し,信用組合の経営破綻処理に係る補助金を交付したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記補助金の交付当時の出納長個人に対してされた損害賠償請求につき,同法232条の2にいう「公益上必要がある場合」に当たるか否かは,地方公共団体が置かれている社会的,経済的状況を前提として,補助金の交付を受ける相手方と地方公共団体との関係,補助金の交付が地方公共団体ないしその住民にもたらす利益,効果,その程度,交付される額がそれに見合うだけの利益をもたらすものかなど諸般の事情を総合的に勘案して決するものであり,その判断は,地方公共団体の長の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当であるとした上,前記経営破綻をした信用組合は,東京都を基盤とする都内最大規模の信用組合であり,その破綻処理をペイオフにより行った場合には,都内に居住し,あるいは都内で事業を営む多数の預金者が損失を被ることになることは容易に予想できることや,同信用組合の破綻処理をペイオフにより行えば,信用不安が格段に高まり,都内の経営基盤の弱い信用組合を初めとする中小の金融機関で取付け騒ぎが起こり,連鎖的な緊急期間の経営破綻が生じ,その金融機関と取引を行っている都民や地域の中小起業者に深刻な影響を生じさせるおそれがあることなどからすると,東京都が,預金者を保護することにより,地域の信用不安を回避し,都民や地域の中小企業者への影響を最小限にとどめようとすることは,東京都の公益に合致するといえ,そのための財政支出が必要であるとの判断に基づき補助金の支出を決定したことについては,判断の要素として考慮すべき点に著しい過誤欠落があったとは認められないとして,前記請求を棄却した事例
- 全文