裁判例結果詳細

事件番号

平成10(行ウ)3

事件名

文書開示拒否処分取消請求事件

裁判年月日

平成12年9月26日

裁判所名

福島地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 県情報公開条例に非開示事由として規定されている個人情報又は法人等情報に該当することを理由としてされた公文書の非公開決定処分の取消訴訟において,実施機関が,前記以外の処分理由を主張することは許されるとした事例 2 県の各部局が作成した公費支出調査資料に記録された各所属毎の食糧費等の公費の不正執行の内容,件数,金額等が,県情報公開条例6条2号に規定する個人情報に当たらないとされた事例 3 県の各部局が作成した公費支出調査資料に記録された懇談等の出席者名に関する情報が,県情報公開条例6条2号に規定する個人情報に当たらないとされた事例 4 県の各部局が作成した公費支出調査資料に記録された支払相手先名に関する情報が,県情報公開条例6条2号に規定する個人情報に当たらないとされた事例 5 県の各部局が作成した公費支出調査資料に記録された支払相手先名及び企業誘致に伴う折衝相手方である法人名等に関する情報が,県情報公開条例6条3号に規定する法人等情報に当たらないとされた事例 6 県の各部局が非公開を前提として作成した公費支出調査資料に関する情報が,県情報公開条例6条7号に規定する事務事業情報に当たらないとされた事例

裁判要旨

1 県情報公開条例に非開示事由として規定されている個人情報又は法人等情報に該当することを理由としてされた公文書の非公開決定処分の取消訴訟につき,審判の対象は前記決定の実体上及び手続上の違法性一般であり,処分理由を追加して主張したとしても,そのことによっては,処分の同一性は損なわれず,審判の対象が異なるに至るものではないなどとして,処分実施機関が,前記以外の処分理由を主張することは許されるとした事例 2 県の各部局が作成した公費支出調査資料に記録された各所属毎の食糧費等の公費の不正執行の内容,件数,金額等につき,これらの情報と職員録とを組み合わせることにより,各所属の長及び事務担当者の氏名は容易に特定されるが,前記情報の公開により公費の支出という公務遂行者やその責任を負うべき者が特定されるにすぎず,それ以上に公務員個人としての行動や生活に関わる意味合いを含むものではなくその限りにおいてプライバシーが問題となる余地はないとして,前記情報を県情報公開条例6条2号に規定する個人情報に当たらないとした事例 3 県の各部局が作成した公費支出調査資料に記録された懇談等の出席者名に関する情報につき,公費を用いてなされる懇談等は私的な懇談等とは異なり出席者は懇談等に参加したこと自体は公開されることを受容して行動しているといわざるを得ず,又前記情報には不正な会計処理による裏金作りを目的として懇談等に出席していない者の氏名を冒用してなされた虚偽記載も含まれているため,前記情報の公開により不正行為に被冒用者が加担したかのような外観を呈する文書が公開されることにより,被冒用者の名誉が毀損される可能性が全く危惧されないわけではないが,このような危惧は抽象的かつ不確定な憶測の域を出るものではなく,県において何らかの対策を講じこれを防止することができないわけではないとして,前記情報を県情報公開条例6条2号に規定する個人情報に当たらないとした事例 4 県の各部局が作成した公費支出調査資料に記録された支払相手先名に関する情報につき,支払相手先は,県の不正支出に関与しておらず,通常の取引きをしたにすぎないから文書の性格を正しく説明しさえすれば支払相手先に不利益が生じるということは考えがたいとして,前記情報を県情報公開条例6条2号に規定する個人情報に当たらないとした事例 5 県の各部局が作成した公費支出調査資料に記録された支払相手先名及び企業誘致に伴う折衝相手方である法人名等に関する情報につき,支払相手先は,県の不正支出に関与しておらず,通常の取引きをしたにすぎないから文書の性格を正しく説明しさえすれば支払相手先に不利益が生じるということは考えがたく又折衝相手方である法人にとって,前記情報が企業上の秘密であるかどうかは抽象的概括的な指摘に止まるなどとして,前記情報を県情報公開条例6条3号に規定する法人等情報に当たらないとした事例 6 県の各部局が非公開を前提として作成した公費支出調査資料に関する情報につき,前記情報が開示されるならば非公開を前提に調査に協力した全職員の期待に背き,将来の非公開を前提に協力を得る必要がある事業の実施に何らかの弊害をもたらすおそれが否定できなくはないが,作成に関与した者の範囲がそれなりに限定されておりこれらの関与者はその職制上,前記情報が開示されたからといって今後の事業に非協力的な態度をとるなどということは考えがたいなどとして,前記情報を県情報公開条例6条7号に規定する事務事業情報に当たらないとした事例

全文

全文

ページ上部に戻る