裁判例結果詳細

事件番号

平成9(行ウ)202

事件名

損害賠償請求事件

裁判年月日

平成12年3月31日

裁判所名

東京地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 特別区の区長が,私用の旅行であるにもかかわらず区長専用車を使用し,同車運転手の時間外勤務手当や有料道路料金等を支出した区の損失において不当に利得を得ているなどとしてされた監査請求が,監査請求期間を徒過したことにつき,地方自治法242条2項ただし書に規定する「正当な理由」がないとされた事例 2 特別区の区長が,私用の旅行であるにもかかわらず区長専用車を使用し,同車運転手の時間外勤務手当や有料道路料金等を支出した区の損失において利得を得たとしてされた地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく同区長に対する不当利得返還請求が,認容された事例

裁判要旨

1 特別区の区長が,私用の旅行であるにもかかわらず区長専用車を使用し,同車運転手の時間外勤務手当や有料道路料金等を支出した区の損失において不当に利得を得ているなどとしてされた監査請求が,監査請求期間を徒過したことにつき,前記旅行に関しては,運転手が作成する運転日誌が存在するほか,有料道路料金の支払に関する領収書が存在し,同各内容については公文書公開条例に基づき閲覧することができ,同各書類により前記旅行が行われたこと自体は容易に判明するものということができるから,前記旅行に関する旅行命令簿が存在しないとしても,前記旅行が秘密裡に行われたということはできず,したがって,同旅行に伴う財務会計上の行為も,秘密裡にされたということはできないものであり,他に財務会計上の行為の内容を偽るなど当該行為について仮装,隠ぺい行為が行われたことは認められないが,財務会計行為について前記のような仮装,隠ぺい行為が行われていない場合において,監査請求期間経過後に監査請求をすることについて「正当な理由」があるというためには,単に当該普通地方公共団体の住民が当該行為の存在及び内容を知り得なかったということのみでは足りず,天災地変等による交通途絶のため監査請求期間を経過したなど,他に監査請求期間経過後においても監査請求を認めることを相当とする特別の事情が存することを要するところ,そのような特別の事情の存在も認められないとして,前記監査請求期間を徒過したことにつき,地方自治法242条2項ただし書に規定する「正当な理由」がないとした事例 2 特別区の区長が,私用の旅行であるにもかかわらず区長専用車を使用し,同車運転手の時間外勤務手当や有料道路料金等を支出した区の損失において利得を得たとしてされた地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく同区長に対する不当利得返還請求につき,前記旅行は,その目的及び内容等から,公務を遂行するものとはいえないから,同旅行に要した費用は本来前記区長が負担すべきものであり,区の負担に帰すべきものではなく,同人は,区の負担において運転手による役務の提供を受け,有料道路料金等の支払を得て,本来個人的に負担すべき前記私用旅行に係る自動車による交通費の負担を免れるという利得を得ているものであり,同費用の支出は,前記区長が区長としての立場で公務のために旅行するとの名目のもとに前記旅行に区長専用車を使用することを指示し,その指示に従って区長専用車が運行されたことを原因としてされたものと認められ,同支出の経緯からすれば,同人は前記費用相当額を法律上の原因なく利得しているといわなければならず,同人が前記私用旅行について区長専用車の使用を指示しなければ,区は前記費用の支出をする必要がなかったということができるから,前記私用旅行により区は前記費用相当額の損失を被ったものであり,区の同損失と同人の前記利得との間には因果関係があるとして,前記請求を認容した事例

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