裁判例結果詳細

事件番号

平成7(行コ)106

事件名

不作為の違法確認等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成6年(行ウ)第5号)

裁判年月日

平成12年3月31日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 都道敷上に道路占用許可を受けずに設置された自動販売機の全部につき,その所有者等に対して都が有する不当利得返還請求権等を行使しないことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき都知事に対して提起された怠る事実の違法確認を求める訴えが,請求の特定を欠くとして,却下された事例 2 都が国から無償貸付けを受けている都道敷上にはみ出して設置された特定の自動販売機の所有者又は貸与者たる企業に対してされた地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく不当利得返還請求及び損害賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

1 都道敷上に道路占用許可を受けずに設置された自動販売機の全部について,その所有者等に対して都が有する不当利得返還請求権ないし不法行為に基づく損害賠償請求権を行使しないことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき提起された都知事に対する怠る事実の違法確認を求める訴えにつき,同号の規定は,住民に対し,当該普通地方公共団体の執行機関又は職員による一定の具体的な財務会計上の怠る事実に限って,裁判所にその違法の確認を求める権能を認めたものであって,それ以上に,一定の期間にわたる又は一定の種類の当該怠る事実を包括的,網羅的に違法の確認を求める権能までを認めたものではないと解されるので,当該対象とする怠る事実を他の怠る事実から区別して特定認識できるように個別的,具体的に摘示することを要するものというべきところ,前記訴えに係る請求は,都知事が,具体的に特定されていない「都道敷にはみ出した自動販売機」に関し,具体的に特定されていない債務者に対し,具体的に特定されていない金額の債権の行使を怠っていることが違法であることの確認を求めるものであって,同号に基づく怠る事実の違法確認請求として特定していないとして,前記訴えを却下した事例 2 都が国から無償貸付けを受けている都道敷上にはみ出して設置された特定の自動販売機の所有者又は貸与者たる企業に対してされた地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく不当利得返還請求及び損害賠償請求につき,前記特定の自動販売機が存在する都道敷はいずれも都が道路法施行法5条1項に基づき国から無償貸与を受けた国有地であって,このような使用貸借による道路敷の使用権は地方自治法238条1項4号所定の権利に当たらないと解されるから,その道路敷が不法占有されることによる財産的価値の減少という面からみれば微弱なものでしかなく,前記損害賠償債権ないし不当利得返還債権の成立についてそもそも解釈の分かれるところであり,都がその債権の行使につき消極に解してこれを行使しなかったことにもそれ相応の根拠,理由があるといえること,主婦連合会等の市民団体が千代田区内の自動販売機について道路へのはみ出しの有無の調査をし,都に,都道敷上にはみ出していた自動販売機の撤去を促す趣旨の申入れをした当時,同自動販売機全部について,自動販売機の所有関係,契約関係や道路敷と私人所有地との境界等,占有期間等を調査して債権を行使すべき相手方及びその金額を特定することは,実際には困難な上,しかも,その手間と煩雑さとともに,費用が多額に及ぶ反面,そのような調査を経て得られる債権額がその費用に満たないものと想定され,実際にされたように,行政指導によって都において費用の負担をすることなく,前記企業等の協力のもとに費用の一部負担をも得て,都道敷上にはみ出して設置されていた自動販売機を撤去させる等の他の多様な是正措置が考えられるのであって,不法行為債権があるとしても裁量の範囲内で,その取立てをしないことが許容される場合もある(地方自治法240条,同法施行令171条の5第3号)こと等にかんがみると,都が前記企業に対して前記各請求権を行使しなかったからといって,その不行使が同法242条1項にいう違法な財産の管理又は財産の管理を違法に怠る事実に当たるとはいえないとして,前記請求を棄却した事例

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