裁判例結果詳細

事件番号

平成10(行コ)22

事件名

損害賠償等、恩給請求棄却処分取消請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成4年(行ウ)第32号、同5年(行ウ)第25号)

裁判年月日

平成12年2月23日

裁判所名

大阪高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 第二次大戦中に日本軍人として従軍し,戦後ソ連に捕虜として連行,抑留され,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島出身者が,主位的に総務庁(平成11年法律第160号による改正後は総務省)恩給局長を被告として旧軍人普通恩給請求棄却処分の取消しを求め,予備的に総理大臣を被告として慰労金請求却下決定及び慰労品請求却下決定の各無効確認を求めた訴えにつき,主観的予備的併合が許される場合に当たらないとして,前記予備的訴えを不適法とした事例 2 恩給法9条1項3号の憲法14条1項適合性 3 第二次大戦中に日本軍人として従軍し,戦後ソ連に捕虜として連行,抑留され,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島半島出身者がした国の安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求が,棄却された事例 4 第二次大戦中に日本軍人として従軍し,戦後ソ連に捕虜として連行,抑留され,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島半島出身者がした憲法29条3項に基づく損失補償請求が,棄却された事例 5 第二次大戦中に日本軍人として従軍し,戦後ソ連に捕虜として連行,抑留され,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島出身者が,国会が在日韓国・朝鮮人についても日本人と同様に,恩給法に基づく旧軍人軍属として恩給を受給する資格及び平和記念事業法に基づく慰労品及び慰労金支給請求権を認める内容の立法をすべき義務を怠ったことが違法であるとしてした国家賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

1 第二次大戦中に日本軍人として従軍し,戦後ソ連に捕虜として連行,抑留され,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島出身者が,主位的に総務庁(平成11年法律第160号による改正後は総務省)恩給局長を被告とする旧軍人普通恩給請求棄却処分の取消しを求め,予備的に総理大臣を被告として慰労金請求却下決定及び慰労品請求却下決定の各無効確認を求めた訴えにつき,総理大臣と総務庁恩給局長とが実質的に同一の当事者であるとはいえず,また,予備的被告である総理大臣は,主位的請求において攻撃防御方法を提出した上,予備的請求に対する独自の主張立証をも強いられているから,応訴上不当に不利益,不安定な立場に立つことがないとはいえず,主観的予備的併合が許される場合には当たらないとして,前記予備的訴えを不適法とした事例 2 恩給法9条1項3号の「国籍ヲ失ヒタルトキ」との規定には,国籍喪失の経緯,態様については何ら定めていないことなどからすると,同号の定める国籍喪失は自己の意思によらない場合も含むと解するのが相当であるところ,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島出身者に対する補償問題は,韓国政府と日本政府との特別取極によって解決されることが予定されていたことを考慮すると,立法政策の当否は別として,そのような出身者に対する関係でも,同号が憲法14条1項に違反するとはいえない。 3 第二次大戦中に日本軍人として従軍し,戦後ソ連に捕虜として連行,抑留され,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島半島出身者がした国の安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求につき,大日本国憲法下で軍務についた軍人と国との間にも,国家公務員たる軍人の生命及び健康等を危険から保護すべき安全配慮義務が存在しないものではないが,我が国がポツダム宣言を受諾して無条件降伏をし,外地にある軍もこれに従い,軍人が降伏した敵国の元軍人として,その滞在地を支配する国の取扱いにゆだねられることとなった状況下においては,我が国が,軍に対し武装解除を命ずるに当たり,その軍人の帰還につき滞在地を支配する国の政府と軍人の帰還について外交交渉を尽くさなかったとしても,直ちに前記義務に違反したとはいえないとして,前記請求を棄却した事例 4 第二次大戦中に日本軍人として従軍し,戦後ソ連に捕虜として連行,抑留され,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島半島出身者がした憲法29条3項に基づく損失補償請求につき,戦中戦後の非常事態の下で国民が負わされた犠牲に対する補償については,国家財政や社会経済その他の資料を基礎とする立法府の裁量的判断にゆだねられており,シベリア抑留者が長期の抑留と強制労働によって受けた損害が深刻かつ甚大なものであったことを考慮しても,他の戦争損害と区別して,同項に基づき損失補償を認めることはできないとして,前記請求を棄却した事例 5 第二次大戦中に日本軍人として従軍し,戦後ソ連に捕虜として連行,抑留され,サンフランシスコ平和条約により日本国籍を喪失した朝鮮半島出身者が,国会が在日韓国・朝鮮人についても日本人と同様に,恩給法に基づく旧軍人軍属として恩給を受給する資格及び平和記念事業法に基づく慰労品及び慰労金支給請求権を認める内容の立法をすべき義務を怠ったことが違法であるとしてされた国家賠償請求につき,国会議員の立法行為は,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて立法を行うというような容易に想定し難い例外的な場合に限り,国家賠償法上の違法の評価を受けるものというべきであるところ,憲法には軍人に対する恩給等の制度やその取扱いに関する規定などは存せず,前記例外的な場合に当たらないとして,前記請求を棄却した事例

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