裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
行政事件
- 事件番号
平成10(行コ)2
- 事件名
損害賠償等、障害年金請求却下処分取消請求控訴事件(原審・大津地方裁判所平成5年(行ウ)第2号、平成6年(行ウ)第4号)
- 裁判年月日
平成11年10月15日
- 裁判所名
大阪高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 第二次世界大戦中に旧日本海軍の軍属として勤務中に負傷し,障害を負ったいわゆる在日韓国人が,国は,在日韓国人等に対しても日本国籍を有する者と同一の内容の援護のための立法措置を講じた上で具体的に補償をすべき義務が存したにもかかわらず,これを放置してきた違法があり,また,戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項が憲法14条あるいは市民的及び政治的権利に関する国際規約に違反することが明白であるにもかかわらず,差別状態解消のための立法義務を怠ってきた違法があるとして,国に対してした国家賠償請求が,棄却された事例 2 第二次世界大戦中に旧日本海軍の軍属として勤務中に負傷し,障害を負ったいわゆる在日韓国人が,戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づいてした障害年金の支給請求に対し,厚生大臣(平成11年法律第160号による改正後は厚生労働大臣)が同人には同法の適用がないとしてした却下処分の取消請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 第二次世界大戦中に旧日本海軍の軍属として勤務中に負傷し,障害を負ったいわゆる在日韓国人が,国は,在日韓国人等に対しても日本国籍を有する者と同一の内容の援護のための立法措置を講じた上で具体的に補償をすべき義務が存したにもかかわらず,これを放置してきた違法があり,また,戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項が憲法14条あるいは市民的及び政治的権利に関する国際規約に違反することが明白であるにもかかわらず,差別状態解消のための立法義務を怠ってきた違法があるとして,国に対してした国家賠償請求につき,同法の国籍条項及び戸籍条項が立法当時にはそれなりの合理的な根拠があったこと,同法に基づく障害年金等を受給する権利は,社会保障的な側面をも有する権利であって,社会保障的な権利の内容をどのように定めるかは一般的には国会の立法裁量に属する事柄と考えられていること等を勘案すると,国会が,財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結あるいは前記規約の批准後も,国籍条項及び戸籍条項をそのまま存置したのは,国籍条項及び戸籍条項が憲法14条あるいは前記規約に違反する疑いがあるとは判断していなかったことによるものと推認されるのであって,国籍条項及び戸籍条項が憲法あるいは同規約に一義的に違反することを認識しながら,あえて国籍条項及び戸籍条項を存置したものとまで認めることは困難であるから,国会が,前記協定又は前記規約の批准後も国籍条項及び戸籍条項をそのまま存置した立法不作為それ自体を国家賠償法1条1項の違法な行為と評価することはできず,その立法不作為が同法上の違法な行為と評価され得るとしても,それは,国会が今後も何らの是正措置を行わないまま,その是正に必要な期間を経過したような場合に限られるとして,前記請求を棄却した事例 2 第二次世界大戦中に旧日本海軍の軍属として勤務中に負傷し,障害を負ったいわゆる在日韓国人が,戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づいてした障害年金の支給請求に対し,厚生大臣(平成11年法律第160号による改正後は厚生労働大臣)が同人には同法の適用がないとしてした却下処分の取消請求につき,同法附則2項所定のいわゆる戸籍条項は,財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結等に伴って当然に失効したものと解されない以上,行政機関である厚生大臣は,前記規定に従って処分の当否を決定すべきものであって,国会が戸籍条項を改廃するなどの是正措置を講じていない段階において,厚生大臣が,独自の判断に基づいて,前記規定が憲法14条あるいは市民的及び政治的権利に関する国際規約26条に違反する疑いがあると判断して,同人に対する関係においてこれを適用しないなどの法律の規定と異なる行政処分を行うことは許されないものと考えられる上,同人は日本国籍を有しない者であるから,仮に戸籍条項の適用を受けないとしても,同法本則の国籍条項の要件を満たさないから,現行の同法を前提とする限り,同法に基づく給付を受ける権利を取得することはできないものであるから,前記処分それ自体は無効ではないとして,前記請求を棄却した事例
- 全文