裁判例結果詳細

事件番号

平成9(行ウ)29

事件名

公文書非公開決定処分取消請求事件

裁判年月日

平成11年7月26日

裁判所名

千葉地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 県総務部秘書課の食糧費(懇談会費)の支出に関する文書に記録された会議等の名称,目的及び出席者の肩書が千葉県公文書公開条例11条2号に規定する個人情報に該当しないとされた事例 2 県総務部秘書課の食糧費(懇談会費)の支出に関する文書に記録された飲食物を提供した事業者の金融機関口座情報(金融機関名,口座名義人,預金種目,口座番号)並びに社印及び代表者印の印影が千葉県公文書公開条例11条3号に定める法人等情報に該当するとされた事例 3 県総務部秘書課の食糧費(懇談会費)の支出に関する文書に記録された相手方の住所及び氏名,相手方コード,検査場所,納入者又は請負者,契約履行の場所,契約の相手先,開催場所が千葉県公文書公開条例11条3号に定める法人等情報に該当しないとされた事例 4 県総務部秘書課の食糧費(懇談会費)の支出に関する文書に記録された会議等の名称及び目的,出席者の肩書,開催場所,相手方の住所及び氏名,検査場所,納入者又は請負者,契約の目的,契約履行の場所,契約の相手先,予定価格(金額)が千葉県公文書公開条例11条8号に定める事務事業情報に該当しないとされた事例

裁判要旨

1 県総務部秘書課の食糧費(懇談会費)の支出に関する文書に記録された会議等の名称,目的及び出席者の肩書につき,千葉県公文書公開条例11条2号がプライバシーを保護法益とする規定であることからすれば,仮に個人識別の可能性が認められても,当該個人のプライバシー保護の観点から,その正当な権利利益の侵害が生じる余地のないものについては,同号により保護されるべき法益が存しないのであるから,プライバシーに関して正当な権利利益の侵害が生じうる個人情報と一体として記録されていたり,あるいは,他の情報と組み合わせることによって同個人情報が特定されるといった事情など,特段の事情のない限り,同号の前提としての「個人に関する情報」には含まれないと解するのが相当であるとした上,出席者が公務員である場合,その職務執行に際して記録された情報に含まれる当該公務員の氏名等は,当該公務を遂行した者を特定し,場合によっては責任の所在を明示するために表示されるものであって,それ以上に前記公務員の個人としての行動ないし生活に関わる意味合いを含むものではなく,食糧費が,行政事務,事業の執行上の直接的必要性を前提として支出されるものである以上,それが会食を伴う懇談であっても,当該公務員の公務の遂行にかかわるものであって,特段の事情のない限り,当該公務員個人のプライバシーが問題となる余地はないと考えられ,また,出席者が私人である場合には,公務に当たらないものの,前記食糧費は,私的な懇談会ではなく,県知事らの職務遂行上,必要な各種関係機関等との協議,意見交換等に際し,県の予算を用いて,必要に応じ設定された懇談会等の経費として支出されたものであり,当該私人の氏名等は,その相手方として表示されるにすぎず,食糧費の執行としての懇談会等への出席は,県の行政事務,事業そのものへの関与にほかならず,また当該私人にとっても,その所属する団体における職務として,県の行政事務,事業の執行上行われる懇談会等に出席する以上,県職員の公務遂行過程に関与していることは当然認識しているはずであることからすれば,その出席の事実を秘匿すべき必要があるものと解されないことは公務員の場合と異ならないから,食糧費の執行過程で懇談会等に出席し,その事実が公にされたからといって,プライバシーに関して,個人の正当な権利利益の侵害が生じる余地はないものということができるとして,このように出席者の氏名が非公開事由に該当しないと解される以上,前記会議等の名称,目的及び出席者の肩書は同号に規定する個人情報に該当しないとした事例 2 県総務部秘書課の食糧費(懇談会費)の支出に関する文書に記録された飲食物を提供した事業者の金融機関口座情報(金融機関名,口座名義人,預金種目,口座番号)並びに社印及び代表者印の印影につき,これらの事項は,当該事業者の事業に係る金銭の出納にかかわる情報であり,どの範囲で,誰に,これらの情報を明らかにするかは,本来当該法人又は個人事業者の判断によるべきものであって,取引関係にない第三者にまで広くこれを公開することを当該法人や個人事業者が予定しているとは到底いえず,その情報の性質,内容に照らしても,前記事業者の同意もなく前記情報を広く開示することは,当該事業者の事業運営上の地位に不利益を与えるものというのが相当であるとして,前記情報は千葉県公文書公開条例11条3号に定める法人等情報に該当するとした事例 3 県総務部秘書課の食糧費(懇談会費)の支出に関する文書に記録された相手方の住所及び氏名,相手方コード,検査場所,納入者又は請負者,契約履行の場所,契約の相手先,開催場所につき,相手方の住所,氏名等により,当該事業者が特定されても,これによって,明らかになる情報は,当該事業者の経営に係る飲食店における料理や飲物等の売上単価,数量,合計金額等,当該飲食店を利用する一般の顧客等に広く開示されている情報にすぎず,特段の事情のない限り,それ以上に当該事業者の営業上の秘密,ノウハウ等,同業者との対抗関係上特に秘匿すべき営業情報が明らかになるわけではなく,また,相手方コードは事業者自身が内部情報として,管理,保有しているわけではないなどとして,前記情報は千葉県公文書公開条例11条3号に定める法人等情報に該当しないとした事例 4 県総務部秘書課の食糧費(懇談会費)の支出に関する文書に記録された会議等の名称及び目的,出席者の肩書,開催場所,相手方の住所及び氏名,検査場所,納入者又は請負者,契約の目的,契約履行の場所,契約の相手先,予定価格(金額)につき,当該情報を開示することにより,関係者との信頼関係が損なわれるとともに将来の事務事業の円滑な執行に支障が生じるかどうかは,当該情報及び当該事務事業の具体的内容,当該事務事業の執行における当該情報の意味合い等の諸般の事情を総合して,個別具体的に判断されるべき事項であり,また,前記支障が生ずるおそれは,単に実施機関の主観においてそのおそれがあると判断されるだけでなく,そのようなおそれが具体的客観的に存在することが必要というべきであるとした上,前記情報のうち,予定価格(金額)については,競争入札における予定価格とは異なり,食糧費の支出に関しての予定価格の公開にとどまるのであって,契約の締結そのものや,ひいては懇談会等の開催に具体的な影響が生じるとまでは直ちにいいがたいこと,別に積算内訳表が公開されており,積算価格から,予定価格の推測は可能なこと等の事情に鑑みれば,予定価格の公開が直ちに事務事業の円滑な執行等に支障を及ぼすものとは認められず,また,それ以外の情報については,当該情報の公開によって,明らかにされるのは,会議の名称,目的,場所,出席者等の外形的事実であるから,通常は当該懇談会等の具体的,個別的な開催目的や,そこで話し合われた事項や内容まで,前記情報の公開によって推知されるものとはいえず,いまだ事務事業の内容も明らかになっていないことからすれば,これら懇談会等の外形的事実が明らかにされることで関係者との間の信頼関係が損なわれ,事務事業の円滑な執行に支障を来す事態が生じるとまでは認めがたいなどとして,前記各情報は千葉県公文書公開条例11条8号に定める事務事業情報に該当しないとした事例

全文

全文

ページ上部に戻る