裁判例結果詳細

事件番号

平成10(行コ)77

事件名

損害賠償等請求控訴事件

裁判年月日

平成11年3月31日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 市長が,市と地元商工会議所との間の協定に基づき,職務専念義務を免除して同会議所に派遣した職員に対して給与等を支給したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項に基づき,市長個人に対してされた損害賠償請求が,一部認容された事例 2 市長が,市と地元商工会議所との間の協定に基づき,職務専念義務を免除して同会議所に派遣した職員に対して給与等を支給したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項に基づき,同会議所に対してされた不当利得返還請求が,一部認容された事例

裁判要旨

1 市長が,市の商工業の振興を図るため,市と地元商工会議所との間の協定に基づき,職務専念義務を免除して同会議所に専務理事として派遣した職員に対して給与等を支給したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項に基づき,市長個人に対してされた損害賠償請求につき,前記会議所の業務内容と市の商工業振興策との間には,客観的に密接な関連性があり,内容的にも両者が一致するものもあるが,大規模小売店舗の事業活動の調整等の重要な部分において両者が必ずしも一致するとは限らず,不一致が生じた場合に前記派遣職員がそれを解消し得るとは必ずしも期待できないし,同職員の専務理事としての具体的な職務内容は,市の商工業振興策とは直接的には関連性のない前記会議所の内部的事務が中心であったから,前記市長が職務専念義務の免除をしたこと及び黙示的に市の給与条例に定める勤務しないことについての承認をしたことは,市の商工業振興という行政目的達成のためにする公益上の必要性があったとはいえず,地方公務員法24条1項,30条及び35条の趣旨に反する違法なものというべきであるとした上,少なくとも前記承認は勤務していない者に給与を支給するか否かを直接決定する行為であって,市長としては前記職務専念義務の免除を違法と判断すれば直ちに前記承認を行わずに派遣期間に係る給与等の支給を停止することができたのであるから,前記職務専念義務の免除及び承認と前記給与等の支出とは直接的な関係があり,同免除及び承認が違法である以上,派遣期間に係る前記給与等の支出も,市長が財務会計法規上の義務に違反した違法な行為というほかないとして,前記請求を一部認容した事例 2 市長が,市の商工業の振興を図るため,市と地元商工会議所との間の協定に基づき,職務専念義務を免除して同会議所に専務理事として派遣した職員に対して給与等を支給したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項に基づき,同会議所に対してされた不当利得返還請求につき,同会議所の業務内容と市の商工業振興策との間には,客観的に密接な関連性があり,内容的にも両者が一致するものもあるが,大規模小売店舗の事業活動の調整等の重要な部分において両者が必ずしも一致するとは限らず,不一致が生じた場合に前記派遣職員がそれを解消し得るとは必ずしも期待できないし,同職員の専務理事としての具体的な職務内容は,市の商工業振興策とは直接的には関連性のない前記会議所の内部的事務が中心であったから,前記市長が職務専念義務の免除をしたこと及び黙示的に市の給与条例に定める勤務しないことの承認をしたことは,市の商工業振興という行政目的達成のためにする公益上の必要性があったとはいえず,地方公務員法24条1項,30条及び35条の趣旨に反する違法なものというべきであるとした上,前記協定は,違法な職務専念義務の免除等を前提として市に勤務しない職員に対し給与等を支給する点において違法なものであって,その違法は地方公務員法の根幹にかかわる重大なものである上,その内容は一般常識にも反する不自然なものであって,通常人ならばその違法性を容易に理解できるから,私法上も無効であるとして,前記請求を一部認容した事例

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