裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成9(行ウ)28
- 事件名
公文書非開示決定取消請求事件
- 裁判年月日
平成11年2月26日
- 裁判所名
札幌地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書の非開示決定の取消訴訟において,処分理由の追加主張が許されるとした事例 2 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書に記録された職員の所属部局課,氏名及び印影等の情報が,北海道公文書の開示等に関する条例(昭和61年北海道条例第1号,平成10年北海道条例第28号(北海道情報公開条例)により全部改正,同改正前)8条1項に非開示事由として規定する個人情報に当たらないとされた事例 3 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書に記録された職員の所属部局課,氏名及び印影等の情報が,北海道公文書の開示等に関する条例(昭和61年北海道条例第1号,平成10年北海道条例第28号(北海道情報公開条例)により全部改正,同改正前)9条2項3号に非開示事由として規定する意思形成過程情報に当たらないとされた事例 4 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書に記録された職員の所属部局課,氏名及び印影等の情報が,北海道公文書の開示等に関する条例(昭和61年北海道条例第1号,平成10年北海道条例第28号(北海道情報公開条例)により全部改正,同改正前)9条2項1号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報に当たるとされた事例 5 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書の開示請求に対し,知事がしたその全部を非開示とする旨の決定が,非開示事由に当たる情報以外の部分開示の余地はなく,また,開示しないことに裁量権の濫用もないとして,適法とされた事例
- 裁判要旨
1 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書の開示請求に対し,これらの文書を開示することは不正受給に関係した職員の氏名を明らかにすることとなり,当該職員に様々な個人的不利益を与えるおそれがあることを理由に,前記各文書に記録された情報が北海道公文書の開示等に関する条例(昭和61年北海道条例第1号,平成10年北海道条例第28号により全部改正,同改正前。以下同様)8条1項に非開示事由として規定する個人情報に当たるとしてした非開示決定の取消訴訟において,実施機関が前記理由と同じ理由により前記情報が同条例9条2項1号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報(「開示することにより,人の生命,身体,財産又は社会的な地位の保護(中略)その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれのある情報」)に当たるとしてした処分理由の追加主張につき,取消訴訟において,行政庁は民事訴訟法上の一般的制限を除き,処分の適法性を基礎付けるため,訴訟物の範囲内で客観的に存在した一切の事実上及び法律上の根拠を主張できるのが原則であるが,行政庁が第一次判断権を行使していない処分理由の追加主張は訴訟物の範囲を逸脱するものとして許されないとした上,当該追加主張は,前記非開示決定の理由として実質的に考慮されていたものと同じ理由により根拠付けられるから,実施機関は処分時点で同追加主張に係る事由について第一次判断権を行使していたものとして,訴訟物の範囲を逸脱するものではなく,また,これを認めることにより相手方に格別の不利益を与えるものでもないとして,当該追加主張は許されるとした事例 2 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書に記録された職員の所属部局課,氏名及び印影等の情報につき,北海道公文書の開示等に関する条例(昭和61年北海道条例第1号,平成10年北海道条例第28号(北海道情報公開条例)により全部改正,同改正前)8条1項本文所定の「個人に関する情報(中略)であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」とは,プライバシーに関するものと推認できる場合も含めて一切の個人に関する情報で特定の個人が識別され得るものをいい,プライバシーが問題となる余地がない情報は同本文括弧書き所定の「公表することを目的として実施機関が作成し,又は取得した情報」に当たるか否かにより開示又は非開示を決定すべきであるところ,前記各文書に記録された情報のうち出張に関与した公務員等の氏名及び印影は,個人に関する情報であって特定の個人が識別され得るものに当たり,その余の情報のうちの個人に関する情報も,既に開示されている他の情報と照合することにより容易に特定の個人を識別し得るから,それ自体で特定の個人が識別され得るものに当たるとした上,前記「公表することを目的として実施機関が作成し,又は取得した情報」を非開示事由としての個人情報からの除外事由としているのは,公表しても社会通念上個人のプライバシーを侵害するおそれがないものとして公表することが慣行になっており,作成ないし取得時点で公表することが予定されていた情報は,その主体が公表されることをあらかじめ予想し,将来公表されることを甘受しているといえるためであるところ,前記各情報は,従来から「公表することを目的として実施機関が作成し,又は取得した情報」として全面的に開示する取扱いがされてきたことからすると,前記除外事由に当たるとして,同項に非開示事由として規定する個人情報に当たらないとした事例 3 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書に記録された職員の所属部局課,氏名及び印影等の情報につき,開示請求に係る公文書に記録された情報が北海道公文書の開示等に関する条例(昭和61年北海道条例第1号,平成10年北海道条例第28号(北海道情報公開条例)により全部改正,同改正前)9条2項3号に非開示事由として規定する意思形成過程情報に該当するというためには,当該情報が道の事務又は事業に係る意思形成過程において実施機関が作成し,又は取得したものであることが必要であるところ,前記各文書が当該旅費の不正受給に関与した職員の処分に際して実施機関により作成ないし取得された事実は認められないから,前記情報を開示することにより前記処分に係る知事の意思形成に著しい支障が生ずるとするのはその前提を欠くなどとして,前記情報は,前記意思形成過程情報に当たらないとした事例 4 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書に記録された職員の所属部局課,氏名及び印影等の情報につき,前記各文書が開示され,当該旅費の不正受給に関与した職員が明らかとなることにより,同職員が旅費の不正受給に関与した者として社会に潜む悪意者の格好の標的となる危険性が高く,同職員に対する非難等を招き,その結果同職員個人の正常な私生活の平穏が脅かされる蓋然性が高いとして,前記情報は,北海道公文書の開示等に関する条例(昭和61年北海道条例第1号,平成10年北海道条例第28号(北海道情報公開条例)により全部改正,同改正前)9条2項1号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報(「開示することにより人の生命,身体,財産又は社会的な地位の保護(中略)その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれのある情報」)に当たるとした事例 5 旅費の不正受給(いわゆる「カラ出張」)に関する旅行命令簿兼旅費請求書及び復命書の開示請求に対し,知事がしたその全部を非開示とする旨の決定につき,前記各文書を含む公文書が既に当該請求者に開示されていることからすると,前記各文書に記録されたどの情報についても,既に開示され請求者が所持する情報と照合することにより容易に特定の職員が識別でき,ひいてはこれら職員の私生活の平穏が脅かされる結果となる蓋然性が高いと認められるから,前記各文書の部分開示の余地はなく,また,公共秩序維持情報を非開示事由として規定する北海道公文書の開示等に関する条例(昭和61年北海道条例第1号,平成10年北海道条例第28号(北海道情報公開条例)により全部改正,同改正前)9条2項1号は,同項柱書きで「開示しないことができる」旨規定しているから,実施機関に当該公文書を開示するか否かの裁量権を与えていることは明らかではあるが,前記各文書を開示しなかったことに裁量権の濫用があったとは認められないとして,前記決定を適法とした事例
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