裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成8(行ウ)9
- 事件名
行政情報非公開決定取消請求事件
- 裁判年月日
平成11年1月25日
- 裁判所名
浦和地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 県立高等学校一般入試の学力検査における自己に関する各教科の得点及びその合計点が,埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号,平成6年埼玉県条例第5号による改正前)6条1項5号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たらないとされた事例 2 県立高等学校入試の資料となる調査書に記載された学習の記録評定の合計点を転記したもの及びこれと学力検査の合計点との相関を作成した図表のうちいずれも自己に関する部分が,埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号,平成6年埼玉県条例第5号による改正前)6条1項5号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たるとされた事例 3 公文書非公開決定処分の審査請求に対する裁決の遅延を理由としてされた国家賠償請求が一部認容された事例
- 裁判要旨
1 県立高等学校一般入試の学力検査における自己に関する各教科の得点及びその合計点につき,これらは数値で表される客観的な個人情報であり,当該県立高等学校の入学者選抜は,当該年度から学力検査の結果とともに調査書の評定を総合的に判断して行われることとなったところ,その要領は公表された上,新聞によりその具体的内容も報道されているから,この選抜制度の内容は県立高等学校を受検する生徒及びその保護者らの間においては既に周知されていたというべきであるし,学力検査の得点は自己採点により確認し得ることなどを考慮すると,前記得点及び合計点を開示しても,当該年度における県立高等学校入学者選抜が学力検査の成績のみで合否が決まるものと誤解され,学力検査の得点の多寡と合否の結果との関係について生徒及び保護者らに誤解や混乱が生ずるおそれや,学力検査を偏重する風潮を助長し,各高等学校間に序列化が生ずるおそれ又は県立高等学校の合否判定事務に著しい影響を与える事態が生ずるおそれがあるとは認め難いとして,前記得点及び合計点は,埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号,平成6年埼玉県条例第5号による改正前)6条1項5号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たらないとした事例 2 県立高等学校入試の資料となる調査書に記載された学習の記録評定の合計点を転記したもの及びこれと学力検査の合計点との相関を作成した図表のうちいずれも自己に関する部分につき,前記転記部分を開示することは調査書の該当部分を開示することと同じ結果となり,これとは評価方法や記載の目的が異なるいわゆる通知票における各教科に関する評定との相異について疑義を生じ,また,前記図表部分を開示すると,新聞に掲載される学力検査の回答を基に自己採点した結果との比較により,調査書の記載内容が不当に不利益なものであったのではないかという疑念を生じさせ,その結果として,不合格となった生徒及び保護者らから,中学校長に対し,調査書の記載内容について問い合わせがされたり,苦情が述べられるなどの事態を招く可能性があり,ひいては調査書を作成する者がありのままを記載することを避けるなど調査書の評定の客観性,公正さが損なわれる結果として,入学者選抜の合否判定事務の円滑,公正な執行に著しい支障が生じ得ると認められ,さらに,前記図表は各高等学校がその実情に応じて教育方針や学科等の特色等を考慮しながら入学許可候補者の選抜のため設定するものであるから,これを開示することにより,新たな学校間の序列化を生ずることも否定できないことからすると,前記図表部分を開示することにより,教育行政の公正かつ円滑な執行に著しい支障を生ずることが明らかであるとして,前記転記部分及び図表部分は,いずれも埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号,平成6年埼玉県条例第5号による改正前)6条1項5号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たるとした事例 3 公文書非公開決定処分の審査請求に対する裁決の遅延を理由としてされた国家賠償請求につき,当該審査庁は,審査請求人から速やかに裁決することを求める旨の上申書が提出されたにもかかわらず,その後実質的な審理を行うことなく,審査請求人の主張及び処分庁の反論等の提出が終了したと認められる時点から約9か月後に裁決をしたのであるから,同裁決は,前記審査請求を審査し,裁決をするために手続上客観的に必要と認められる期間内に行われたとはいえず,その遅延は違法であるとして,前記請求を一部認容した事例
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