裁判例結果詳細

事件番号

平成6(行ウ)31

事件名

保護廃止決定処分取消請求事件

裁判年月日

平成10年5月26日

裁判所名

福岡地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 生活保護法4条1項にいう「資産(中略)を(中略)活用すること」と借用物の利用との関係 2 生活保護受給者が自動車の所有及び借用等を禁止した指示に違反したことを理由として,市福祉事務所長が生活保護法62条3項に基づいてした保護廃止処分が,処分の相当性において保護実施機関に与えられた裁量の範囲を逸脱したものであるとして,違法とされた事例

裁判要旨

1 生活保護法4条1項にいう「資産」とは,要保護者が所有権ないしこれに準ずる権利を有するものを指すと解され,他人からの借用物のように要保護者に処分権限のないものは含まれないというべきであるが,被保護者は借用物であればいかなるものであってもこれを利用できると解することは,最低限度の生活の需要を満たしつつこれを超えない範囲で保障をしようとする同法の趣旨に反することとなるから,同法4条1項にいう「資産(中略)を(中略)活用すること」との保護の要件に照らし,当該借用物を利用することが最低限度の生活として容認できるかどうかという観点も含めて,その借用の可否を検討すべきである。 2 生活保護受給者が自動車の所有及び借用等を禁止した指示に違反したことを理由として,市福祉事務所長が生活保護法62条3項に基づいてした保護廃止処分につき,前記指示は同法27条1項に基づく指示であると認められるところ,自動車は,本体価格自体高額な物品であり,維持費等の負担も相当額に上るため,前記指示及び処分時においても,一般的には最低限度の生活にはふさわしくない高価な生活用品であるという観念が残っていたことからすると,生活用品としての自動車の所有及び借用を原則的に認めないとする取扱いは一応合理性を有するものといえるから,前記指示の内容が違法であるとはいえず,また,前記受給者は前記指示に違反して自動車を使用したものと認められるが,同人の世帯の要保護性は高い上,直接の違反行為自体の内容が自動車の借用による使用であって,近時自動車の普及率が著しく高まり,比較的身近な生活用品になってきていること等の事情を考え併せると,同人の違反行為は直ちに廃止処分を行うべきほど悪質なものとはいえないから,前記福祉事務所長が直ちに前記保護廃止処分を行ったことは,処分の相当性において保護実施機関に与えられた裁量の範囲を逸脱したものであるとして,同処分を違法とした事例

全文

全文

ページ上部に戻る