裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
行政事件
- 事件番号
平成8(行ウ)25
- 事件名
損害賠償等請求事件
- 裁判年月日
平成10年3月27日
- 裁判所名
名古屋地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 国家褒章を受章した県議会議員及び議長又は副議長を退任した県議会議員に対する記念品料の支給が違法であるとする住民監査請求が当該支給の日から1年を経過した後にされたことにつき,地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」がないとした事例 2 国家褒章を受章した県議会議員及び議長又は副議長を退任した県議会議員に対する記念品料の支給が,地方自治法204条の2に違反するとして,同法242条の2第1項4号に基づき知事個人に対してされた損害賠償請求が,認容された事例 3 国家褒章を受章した県議会議員及び議長又は副議長を退任した県議会議員に対する記念品料の支給が,地方自治法204条の2に違反するとして,同法242条の2第1項4号に基づき,同支給に係る支出負担行為及び支出命令を専決した県財政課課長補佐個人及び支出を専決した県出納課課長補佐個人に対してされた各損害賠償請求が,いずれも棄却された事例
- 裁判要旨
1 国家褒章を受章した県議会議員及び議長又は副議長を退任した県議会議員に対する記念品料の支給が違法であるとする住民監査請求が当該支給の日から1年を経過した後にされたことにつき,同記念品料の支給は,予算又は決算に含まれていたものであり,通常の手続に従ってされたものであるところ,その中には県の内規である自治功労者に対する記念品料及び弔慰金支給基準にのっとってされたものがあり,また,県の住民は公文書公開請求をすることによって前記支給に係る支出金調書のうちの特定の個人が識別される部分及び口座番号を除いた部分並びに前記支給基準を閲覧し,これらの写しの交付を受けることができたから,前記支給について隠ぺい行為等があったとは認められず,これが秘密裡にされたとはいえないとして,前記住民監査請求の請求期間の徒過に地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」がないとした事例 2 国家褒章を受章した県議会議員及び議長又は副議長を退任した県議会議員に対する記念品料の支給が,地方自治法204条の2に違反するとして,同法242条の2第1項4号に基づき知事個人に対してされた損害賠償請求につき,前記記念品料は,議員又は議長,副議長という地位に関連して支給されたものと認められるところ,同支給は,現金でされたものである上,金額も一人当たり20万円又は10万円であって決して低額ではないから,社会通念上儀礼の範囲内のものということはできず,同法204条の2の規定に違反するものであるとした上,知事は,前記記念品料の金額を知っており,その支給が社会通念上儀礼の範囲内のものかどうかという判断は常識的なものであって特別な知識がないとすることができないものではないことからすると,前記支給が社会通念上儀礼の範囲を超える疑いがかなりの程度あることを知ることができたというべきであって,専決権者に対して同支給が同法に違反することはないかなどを検討するよう指示すべきであったにもかかわらず,このような指示をしなかったのであるから,財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,過失により同違法行為を阻止しなかったものであるとして,前記請求を認容した事例 3 国家褒章を受章した県議会議員及び議長又は副議長を退任した県議会議員に対する記念品料の支給が,地方自治法204条の2に違反するとして,同法242条の2第1項4号に基づき,同支給に係る支出負担行為及び支出命令を専決した県財政課課長補佐個人並びに支出を専決した県出納課課長補佐個人に対してされた各損害賠償請求につき,前記記念品料の支給は,社会通念上儀礼の範囲内のものということはできないから,同法204条の2の規定に違反するものではあるが,県財政課課長補佐は本来権限を有する知事がこのような財務会計行為を是認していると考えたとしても不自然ではない状況にあったこと,前記のような記念品料の支給は長年にわたって行われ,国家褒章を受章した議員に対する支給については支給基準も設けられており,その適法性が問題になったこともなかったことからすると,前記財政課課長補佐が前記支給に係る支出負担行為等を行ったことに重過失があるとまではいえず,また,県出納課課長補佐による審査は書面が中心であると認められる上,前記のような記念品料の支給が社会通念上儀礼の範囲内に属するか否かには価値判断にかかる部分がないとはいえないから,社会的儀礼の範囲を超えることが明白でないときには重過失があったとはいえないところ,記念品料の支給は長年にわたって行われており,その適法性が問題となったこともなかったことからすると,これが社会的儀礼の範囲を超えることが明白であったとはいえず,同人には前記支給に係る支出を行ったことについて重過失があるとはいえないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例
- 全文