裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成9(行ウ)53
- 事件名
出生届自己情報開示処分取消請求事件
- 裁判年月日
平成10年3月24日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 出生届及び認知届の受理に関して区長が法務局長から取得した指示文書に記録された情報が,杉並区個人情報保護条例(昭和61年杉並区条例第39号)による閲覧等の請求の対象となるとされた事例 2 出生届及び認知届の受理に関して区長が法務局長から取得した指示文書に記録された当該個人の自己に関する情報が,杉並区個人情報保護条例(昭和61年杉並区条例第39号)18条2項3号に自己情報の非開示事由として規定する「照会(中略)に関するものであって,閲覧等の請求に応ずることによって,実施機関の公正又は適正な行政執行を著しく妨げるおそれがあると認められるもの」に当たるとされた事例
- 裁判要旨
1 出生届及び認知届の受理に関して区長が法務局長から取得した指示文書に記録された情報につき,同文書は国の機関委任事務である戸籍事務の管理執行に係る内部事務処理文書としての性質を有するものであるが,地方公共団体における公文書の管理自体は,それが機関委任事務とされているなど,法令に特段の定めがない限り,当該文書を機関委任事務を通じて保有するに至ったか否かを問わず,地方公共団体の固有事務としての性格を持つものであり,それらの開示も公文書の管理の一態様として同様の性格を持つものというべきであるから,機関委任事務を通じて保有するに至った文書であっても条例により情報開示の対象とすることができると解するのが相当であり,また,戸籍事務については,戸籍法及びその関係法令には文書の管理に係る事項に関する規定があるものの,前記指示文書のような戸籍事務の処理過程で作成ないし取得された内部事務処理文書の開示の可否を定めた明文の規定はなく,戸籍法がこのような多種多様の内部事務処理文書の開示を一律に禁止していると解すべき合理的根拠はないから,このような文書について条例により開示の対象とすることができるとして,前記情報は杉並区個人情報保護条例(昭和61年杉並区条例第39号)による閲覧等の請求の対象となるとした事例 2 出生届及び認知届の受理に関して区長が法務局長から取得した指示文書に記録された当該個人の自己に関する情報につき,同法務局長は同区長に対し同文書について非開示の指示をしていたものであるところ,法務局又は地方法務局の長は,戸籍事務を通じて保有するに至った内部事務処理文書を市区町村の条例に基づき開示することが戸籍事務の管理執行に支障を及ぼすおそれがある場合には,戸籍法3条に基づく監督権の行使として,その裁量により,市区町村長に対し,当該文書の開示の可否を指示することができるものというべきあり,前記文書は,法令の規定に適合しない出生届の扱いをどうするかなど,戸籍事務の管理執行に直接かかわる内容の文書であって,これを開示することにより,事後の同種案件の取扱い等に支障が及ぶ可能性があることからすれば,法務局長が区長に対しその裁量判断により前記文書について非開示の指示をしたことは,前記監督権の行使として正当なものであるから,前記区長が,前記文書の作成者であり,かつ,同区長の戸籍事務の監督権者である前記法務局長の指示に反して同文書を開示することは,同区長が戸籍事務を適正に管理執行する上で不可欠の前提となる前記法務局長ないし国との基本的な信頼関係を損なうことになるのみならず,同開示自体が法令に基づいて統一的にされるべき戸籍事務の管理執行に支障を及ぼすおそれがあるとして,前記情報は,杉並区個人情報保護条例(昭和61年杉並区条例第39号)18条2項3号に自己情報の非開示事由として規定する「照会(中略)に関するものであって,閲覧等の請求に応ずることによって,実施機関の公正又は適正な行政執行を著しく妨げるおそれがあると認められるもの」に当たるとした事例
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