裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
行政事件
- 事件番号
平成7(行コ)32
- 事件名
難民不認定処分取消請求控訴事件
- 裁判年月日
平成8年9月26日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 出入国管理及び難民認定法61条の2第2項括弧書の「その事実を知つた日」の意義 2 出入国管理及び難民認定法61条の2第2項ただし書の「やむを得ない事情」の意義 3 難民の認定を求める申請につき申請期間の制限を設けた出入国管理及び難民認定法61条の2第2項の難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書への適合性 4 本邦に在留中の中華人民共和国国籍を有する者からの難民認定申請に対し,法務大臣が出入国管理及び難民認定法61条の2第2項所定の期間経過を理由としてした難民の認定をしない旨の処分の取消請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 出入国管理及び難民認定法61条の2第2項所定の申請期間の起算日である「その事実を知つた日」とは,申請者において自分が迫害を受けるおそれがあり,かつ,それにより難民認定を受け得るという認識を有するに至った日と解するのが相当である。 2 出入国管理及び難民認定法61条の2第2項ただし書の「やむを得ない事情」とは,申請期間内に申請をする意思を有していた者が,病気,交通の途絶等の客観的事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合のほか,本邦において難民の認定の申請をするか否かという意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合をいう。 3 難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書は難民の認定手続について特段の規定を設けておらず,同手続は締約国の立法裁量にゆだねられているところ,出入国管理及び難民認定法61条の2第2項が申請期間の制限を設けているのは,難民となる事由が生じてから長期間経過後に難民の認定が申請されると,その当時の事実関係を把握するのが著しく困難となり,適正な難民の認定ができなくなるおそれがあるため,難民認定行政の公正,円滑な実施を図ろうとするものであり,また,同項が定める60日間という申請期間が,難民の申請をするかどうかを考慮するために不十分であるとはいえないから,同項の規定は前記条約及び議定書の趣旨に反し無効であるとはいえない。 4 本邦に在留中の中華人民共和国国籍を有する者からの難民認定申請に対して法務大臣のした難民の認定をしない旨の処分の取消請求につき,前記申請は,申請者が難民となることを知った日から起算すると,出入国管理及び難民認定法61条の2第2項所定の申請期間を経過してされたものであり,かつ,申請期間を経過したことにつき,同項ただし書の「やむを得ない事情」も認められないとして,前記請求を棄却した事例
- 全文