裁判例結果詳細

事件番号

平成3(行ウ)201

事件名

松本空港施設変更許可処分取消請求事件

裁判年月日

平成8年5月14日

裁判所名

東京地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 航空法43条1項に基づき運輸大臣がした県営空港の飛行場施設の変更許可の取消しを求める訴えにつき,同許可によって新たにあるいは従前以上に進入表面等による私権制限を受けることになる者の原告適格を肯定した事例 2 航空法43条1項に基づき運輸大臣がした県営空港の飛行場施設の変更許可の取消しを求める訴えにつき,同許可によって新たにあるいは従前以上に進入表面等による私権制限を受けない者には,当該飛行場に離着陸する航空機の墜落による危険や騒音,振動被害を受けることを理由として前記取消しを求める法律上の利益があるとはいえないとして,その原告適格を否定した事例 3 航空法43条1項に基づき運輸大臣がした県営空港の飛行場施設の変更許可は,飛行場周辺に水平表面上に突出する鉄塔等航空機の離着陸に支障となる物件があるから,同法43条1項,39条1項1号,同法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)79条1項1号所定の要件を欠くなどとしてされた前記許可の取消請求を棄却した事例

裁判要旨

1 航空法43条1項に基づき運輸大臣がした県営空港の飛行場施設の変更許可の取消しを求める訴えにつき,同許可による進入表面等の範囲の変更によって新たに同法49条1項に基づく建造物の設置の禁止等の私権制限が及ぶ範囲に土地を有する者及び従前よりも私権制限が強化される範囲に土地を有する者は,同許可により自己の権利を侵害される者として同許可の取消しを求める法律上の利益があるとして,その原告適格を肯定した事例 2 航空法43条1項に基づき運輸大臣がした県営空港の飛行場施設の変更許可の取消しを求める訴えにつき,同法及び同法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)には飛行場施設の変更の許否を審査する段階で,飛行場に離着陸が予定されている航空機による騒音,振動被害の有無,程度を具体的に審査すべきことを義務付ける規定や飛行場の周辺住民が航空機の墜落による危険にさらされない利益を個別具体的に保護しているとみられる規定はなく,同法43条によって準用される同法39条1項2号の「他人の利益を著しく害することとならない」との規定も,進入表面等による私権制限の対象となる私人の財産権に対し配慮すべきことを定めたものと解されるから,同許可によって新たにあるいは従前以上に進入表面等による私権制限を受けない者には,当該飛行場に離着陸する航空機の墜落による危険や騒音,振動被害を受けることを理由に前記取消しを求める法律上の利益があるとはいえないとして,その原告適格を否定した事例 3 航空法43条1項に基づき運輸大臣がした県営空港の飛行場施設の変更許可は,飛行場周辺に水平表面上に突出する鉄塔等航空機の離着陸に支障となる物件があるから,同法43条1項,39条1項1号,同法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)79条1項1号所定の要件を欠くなどとしてされた前記許可の取消請求につき,同法施行規則79条1項1号にいう飛行場の周辺にある建造物,植物その他の物件であって運輸大臣が航空機の離陸又は着陸に支障があると認めるもの(以下「離着陸支障物件」という。)とは,航空機が安全に離着陸できるために一般に必要とされる空間,すなわち,進入表面,転移表面,水平表面及びこれに極めて近接する範囲にあってその離着陸の妨げとなる可能性があると認められる物件をいい,水平表面については,その上に出る物件の存在が絶対に許されないわけではなく,その位置や突出の程度,その規模,飛行の態様等に照らし,離着陸する航空機の航行の安全を特に害するものといえないときは,離着陸支障物件に当たらないとした上で,前記鉄塔等は水平表面の西側に存するため,同飛行場に離着陸する航空機の旋回のための飛行経路が原則として東側に限定されることなどに照らせば,前記鉄塔等が飛行の安全の支障となるとはいえないなどとして,前記請求を棄却した事例

全文

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