裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成1(行コ)75
- 事件名
戦犯記念碑設置違法確認等請求,損害賠償請求各控訴事件
- 裁判年月日
平成5年9月28日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 地方自治法242条の2第1項3号に基づき,国から敷地の無償貸与を受けて特別区が設置した公園内に存する記念碑を撤去しないことの違法確認を求める訴えが,住民訴訟の対象とならない行為又は事実を対象とするものであるとして,却下された事例 2 特別区が設置した公園内に東京拘置所刑場の跡地であることなどを示す記念碑等を設置したことが違憲,違法であるとして,地方自治法242条の2第1項に基づき提起された,同公園及び同跡地上の施設の維持管理費の支出差止請求等が,前記記念碑等の設置及び維持管理は違憲,違法ではないとして,いずれも棄却された事例 3 特別区が設置した公園内に存する東京拘置所刑場の跡地であることなどを示す記念碑等の設置のとりやめを求める監査請求を行ったことにより,地方自治法242条の2第1項4号に基づき提起された特別区長個人に対する同記念碑等の維持管理費相当額の損害賠償請求についても監査請求前置の要件を満たしているとした事例 4 地方自治法242条の2第1項1号に基づく特別区長に対する支出差止請求に,同法242条の2第1項4号に基づく特別区長個人に対する損害賠償請求を追加した場合,出訴期間遵守との関係では,後訴は前訴が提起されたときに提起されたものとみることができるとされた事例
- 裁判要旨
1 地方自治法242条の2第1項3号に基づき,国から敷地の無償貸与を受けた公園内の記念碑を撤去しないことの違法確認を求める訴えが,使用貸借による権利は,同法238条1項4号にいう「地上権,地役権,鉱業権その他これらに準ずる権利」に該当せず,同法242条1項にいう「財産」に含まれないし,記念碑を撤去すべきか否かは行政管理上の問題であるから,これを撤去しないことは財務的管理についての怠る事実に当たらないとして,却下された事例 2 特別区が設置した公園内に東京拘置所刑場の跡地であることなどを示す記念碑等を設置したことが戦犯の慰霊顕彰を目的とするもので違憲,違法であるとして,地方自治法242条の2第1項1号並びに4号に基づき提起された,同公園又は同記念碑等の維持管理費の支出差止請求並びに特別区長個人に対する同記念碑等の維持管理費相当額の損害賠償請求が,同記念碑等は歴史的事実を肯定的評価あるいは否定的評価のいずれも示すことなく,事実として記念する目的の下に設置されたものであって,その設置及び維持管理は違憲,違法ではないとして,いずれも棄却された事例 3 特別区が設置した公園内に存する東京拘置所刑場の跡地であることなどを示す記念碑等の設置のとりやめを求める監査請求がされている場合について,同記念碑等の維持管理費の支出行為は,前記監査請求に係る行為から派生又は後続することが当然に予測されるものであるから,前記監査請求を行ったことにより,地方自治法242条の2第1項4号に基づき提起された特別区長個人に対する前記維持管理費相当額の損害賠償請求についても監査請求前置の要件を満たしているとした事例 4 地方自治法242条の2第1項1号に基づき,特別区長を被告として提起された同区の設置した公園内に存する記念碑等の維持管理費の支出差止請求に,特別区長個人に対する同記念碑等の維持管理費相当額の損害賠償請求を追加した場合,両訴訟は中心的な争点が共通であるのみならず,前訴により差止めを求められている維持管理費の支出をすればこれに対する損害賠償請求がされるであろうことは当然予測し得るものであり,また,両訴の被告は実質的には同一といえるから,出訴期間遵守との関係では,後訴は前訴が提起されたときに提起されたものとみることができるとされた事例
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