裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成3(行コ)17
- 事件名
損害賠償請求控訴事件
- 裁判年月日
平成5年5月25日
- 裁判所名
大阪高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 地方自治法243条の2第3項に基づく賠償命令の確定と同法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求の訴え提起の利益 2 地方自治法243条の2第3項に基づく賠償命令の行政処分性とその確定の効果 3 地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく損害賠償請求訴訟提起後に同法243条の2第3項に基づく賠償命令を発することの可否 4 町の出納員たる出納室長による公金横領に関する収入役の義務懈怠を理由とする町の同人に対する賠償金支払請求につき,町が公務員等の懲戒免除等に関する法律(昭和27年法律第117号)3条に基づく弁償責任等の免除に関する条例を制定しなかったことが,憲法14条には違反せず,町の前記支払請求は,権利の濫用に当たらないとされた事例 5 町の出納員たる出納室長による公金の横領につき,収入役に対して職務上の義務懈怠を理由として提起された地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく損害賠償請求が,同法243条の2第3項に基づく賠償命令によって定められた金額の限度で認容された事例 6 町の出納員たる出納室長による公金の横領につき,町長及び助役に対して職務上の義務懈怠を理由として提起された地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく損害賠償請求が,両名について出納室長の横領行為の原因となる職務の懈怠があったと認めることはできないなどとして,棄却された事例
- 裁判要旨
1 地方自治法243条の2は,1項所定の職員の行為による賠償責任について民事訴訟法に基づく訴えによって解決することも許していると解され,同条3項に基づく賠償命令が確定した場合においても,これに執行力を付するためには民事訴訟法に基づく訴えを必要とするから,この場合でもなお訴えが許されるというべきである。 2 地方自治法243条の2第3項に基づく賠償命令は,地方公共団体内部における簡便な責任追及の方法を設けたものではあるが,その趣旨やこれに対する不服申立手続等を考慮すると,行政庁が優越的な意思の主体として命令する行政処分と解するのが相当であるから,同命令の確定により,処分の相手方たる職員の賠償責任の有無及び範囲が実体的に確定し,住民が提起した地方自治法242条の2に基づく住民訴訟は,これに拘束される。 3 地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく損害賠償請求訴訟が提起されたとしても,同法243条の2第2項によれば,同条1項の責任を負う職員が2人以上ある場合は,その職分及び損害発生の原因の程度に応じて損害賠償の責めに任ずるものであるところ,簡便な賠償命令により早期に応分の賠償責任を決定し確定させることは前記住民訴訟遂行の妨げになるものとも言い難く,また,賠償命令制度の趣旨,目的,賠償命令を発するについての期間の制限などを考慮すると,普通地方公共団体の長は,住民訴訟の提起後も賠償命令を発することができると解するのが相当である。 4 町の出納員たる出納室長による公金横領に関する収入役の義務懈怠を理由とする町の同人に対する賠償金支払請求につき,町が公務員等の懲戒免除等に関する法律(昭和27年法律第117号)3条に基づく弁償等の免除に関する条例を制定しなかったことは,当該横領行為による町の財政の莫大な損害がいまだ充分な回復を見ていない実情が推認されるのに,これにかかわった職員の責任を免除することは町民感情が許さないなど合理的事由に基づくものであることなどに照らすと,憲法14条には違反せず,したがって,町の前記支払請求は,権利の濫用に当たらないとされた事例 5 町の出納員たる出納室長による公金の横領につき,収入役に対して職務上の義務懈怠を理由として提起された地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく損害賠償請求が,収入役は指定金融機関からの公金取扱事務報告書等と預貯金通帳との照合を全く怠っていたものであり,同法243条の2所定の損害賠償責任を免れないとして,同条3項に基づく町長の賠償命令によって定められた金額の限度で認容された事例 6 町の出納員たる出納室長による公金の横領につき,町長及び助役に対して職務上の義務懈怠を理由として提起された地方自治法242条の2第1項4号後段に基づく損害賠償請求が,両名について出納員の横領行為を認識ないし予見し収入役等に対する指揮監督権限を直接に行使すべきであったと認めるに足りる事情の立証がなく,出納室長の横領行為の原因となる職務の懈怠があったと認めることはできないなどとして,棄却された事例
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