裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成2(行コ)4
- 事件名
忠魂碑等維持管理補助金返還請求控訴事件
- 裁判年月日
平成4年12月18日
- 裁判所名
福岡高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 市が宗教的施設としての性質を有する忠魂碑の維持管理のためにその維持管理主体に対してした補助金の交付が,憲法89条,20条1項,3項に違反しないとされた事例 2 慰霊祭が行われることを補助金の交付の条件としている市の補助金交付要綱及び補助金交付基準に基づく補助金の交付が,憲法20条3項に違反しないとされた事例 3 忠魂碑の維持管理主体である保存会が,憲法89条前段又は同法20条1項後段の団体に当たらないとされた事例 4 市が忠魂碑の維持管理主体に対してした補助金の交付が,地方自治法232条の2に違反しないとされた事例 5 市が忠魂碑等の維持管理主体である遺族会,連合自治会等に対してした補助金の交付が違憲,違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長個人に対してされた損害賠償請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 市が宗教的施設としての性質を有する忠魂碑の維持管理主体である遺族会に対してした補助金の交付につき,その目的及び効果は専ら戦没者の遺家族の精神的援護という社会福祉にあること,市と宗教とのかかわり合いの程度,市民に与える宗教的影響などは極めて軽微であること,特定宗教に対する援助,助長,促進又は圧迫,干渉等の影響も無視し得る程度に小さいものであることからすれば,前記補助金の交付は,憲法89条,20条1項,3項に違反しないとした事例 2 市の戦没者慰霊碑等維持管理費補助金交付要綱及びその具体的基準である戦没者慰霊碑等維持管理費補助金交付基準に基づく市の補助金の交付につき,当該交付基準が慰霊祭が行われることを補助金交付の要件としているのは,戦没者遺族に対する精神的援護という趣旨をより徹底させる意味合いを持つにとどまり,何らかの宗教を助成し,あるいは排除するという趣旨を含むものではないし,当該要綱等の適用される忠魂碑の維持管理主体が既存宗教の儀式を用いている趣旨も,戦没者に対する追悼,顕彰,感謝の意思表明の場を適宜設定するための方策という以上に出るものではなく,市と宗教とのかかわり合いの程度はなお軽微であるとして,前記補助金の交付は憲法20条3項に違反しないとした事例 3 忠魂碑の維持管理主体である保存会が,宗教的活動を目的とする組織,団体ではなく,憲法89条前段の宗教上の組織若しくは団体又は憲法20条1項後段にいう宗教団体に当たらないとされた事例 4 市が忠魂碑等の維持管理主体である遺族会,連合自治会等に対してした補助金の交付が,同忠魂碑等は社会福祉的な趣旨で公益性をもって維持管理されていること,その金額が社会通念上妥当な範囲内であるということからみれば,地方自治法232条の2に違反しないとされた事例 5 市が忠魂碑等の維持管理主体である遺族会,連合自治会等に対してした補助金の交付が違憲,違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき市長個人に対してされた損害賠償請求が,前記補助金の支出は憲法89条,20条1項,3項,地方自治法232条の2の各規定に違反するものではないとして,棄却された事例
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