裁判例結果詳細

事件番号

昭和59(行コ)38

事件名

事業認定処分取消請求,特定公共事業認定処分取消請求各控訴事件

裁判年月日

平成4年10月23日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした土地収用法による事業認定及び公共用地の取得に関する特別措置法による特定公共事業の認定につき,起業地内の土地又は建物について所有権,賃借権等の権利を有しない者は,前記各認定の取消しを求める訴えの原告適格を有しないとした事例 2 公共用地の取得に関する特別措置法20条,21条は,憲法29条,31条,32条に違反するか 3 公共用地の取得に関する特別措置法38条の2ないし38条の4は,憲法92条に違反するか 4 特定公共事業の認定の要件の一つとして公共用地の取得に関する特別措置法7条3号に掲げる「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」の意義 5 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした土地収用法による事業認定及び公共用地の取得に関する特別措置法による特定公共事業の認定が,土地収用法20条3号及び公共用地の取得に関する特別措置法7条3号に規定する各要件を満たしているとされた事例 6 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした土地収用法による事業認定が,土地収用法20条4号に規定する要件を満たしているとされた事例 7 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした公共用地の取得に関する特別措置法による特定公共事業の認定が,同法7条4号に規定する要件を満たしているとされた事例 8 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした土地収用法による事業認定及び公共用地の取得に関する特別措置法による特定公共事業の認定に,手続上の違法がないとした事例 9 起業者が収用委員会に対して収用裁決を申請することのできる権利ないし権能に,民法167条1項,2項の規定は適用されないとした事例 10 土地収用法に基づく事業認定後,収用裁決がされないまま20年が経過したことにより,土地所有者は同法106条所定の買受権を失ったから,当該区域に係る起業者の収用裁決請求権が失効し,事業認定も失効したとの主張が,排斥された事例

裁判要旨

1 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした土地収用法による事業認定及び公共用地の取得に関する特別措置法による特定公共事業の認定の各取消しを求める訴えにつき,土地収用法が法的保護の対象としている個人的利益は,専ら起業地内の土地等の所有者及び関係人の財産権ないし財産的利益であり,特定の公共事業の認定の取消しを求める法律上の利益を有する者は,収用手続によって土地等を収用又は使用されるおそれのある者及び土地収用法8条3項にいう関係人に限られるなどとして,起業地内の土地又は建物について所有権,賃借権等の権利を有しない者の原告適格を否定した事例 2 公共用地の取得に関する特別措置法20条,21条は,憲法29条,31条に違反しない。 3 公共用地の取得に関する特別措置法38条の2ないし38条の4は,憲法92条に違反しない。 4 特定公共事業の認定の要件の一つとして公共用地の取得に関する特別措置法7条3号に掲げる「事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること」とは,当該土地がその事業の用に供されることによって得られる公共の利益と,当該土地がその事業の用に供されることによって失われる公共的又は私的利益とを比較衡量した場合に,前者が後者に優越すると認められることをいう。 5 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした土地収用法による事業認定及び公共用地の取得に関する特別措置法による特定公共事業の認定につき,起業地が空港用地として適地であり,前記各認定の時までに提示された他の代替地よりも優れており,また,当該事業によって得られる公共の利益が起業地を当該事業の用に供することによって失われる利益よりも優越するとした建設大臣の判断に誤りはないとして,土地収用法20条3号及び公共用地の取得に関する特別措置法7条3号に規定する各要件を満たしているとした事例 6 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした土地収用法による事業認定につき,同認定当時,当該空港建設の必要性が顕著に認められたことが明らかであり,この事業のために当該起業地を収用する公益上の必要性があったとして,土地収用法20条4号に規定する要件を満たしているとした事例 7 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした公共用地の取得に関する特別措置法による特定公共事業の認定につき,当該事業の認定当時,羽田空港の離着陸処理能力の限界に伴う着陸時の上空待機,発進の遅延等の事態を解消し,航空輸送及びその安全性を確保し,また,航空機の大型化・高速化に対処するため,当該事業を緊急に施行し新空港の供用を開始する必要があったなどとして,同法7条4号に規定する要件を満たしているとした事例 8 新東京国際空港の建設事業について建設大臣のした土地収用法による事業認定及び公共用地の取得に関する特別措置法による特定公共事業の認定につき,公聴会の開催を要する旨定める航空法39条2項,55条の2第2項は前記空港の位置について閣議決定,政令公布をする際には適用されないから,これらの時点で公聴会の開催を怠った違法はなく,その他前記各認定には手続上の違法がないとした事例 9 起業者が収用委員会に対して収用裁決を申請することのできる権利ないし権能は,土地収用法によって設けられた手続上の請求権であり,民法上の債権その他の財産権とは性質を異にするものであって,民法167条1項,2項の規定は適用されないとした事例 10 土地収用法に基づく事業認定後,収用裁決がされないまま20年が経過したことにより,土地所有者は同法106条所定の買受権を失ったから,当該区域に係る起業者の収用裁決請求権が失効し,事業認定も失効したとの主張が,同条の規定により,買受権が成立しなければ収用してはならないことまでが定められているとは解されないなどとして,排斥された事例

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