裁判例結果詳細

事件番号

昭和60(行ウ)5

事件名

公文書公開拒否処分取消請求事件

裁判年月日

平成元年5月23日

裁判所名

横浜地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)5条1項2号にいう「明らかに不利益を与えると認められるもの」の意味 2 神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)5条1項1号にいう「特定の個人が識別され,又は識別され得る」の意味 3 神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)に基づく共同住宅の各階平面図,立面図及び断面図の閲覧請求に対し,知事が同条例5条1項1号の「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。」及び2号の「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公開することにより,当該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められるもの。」という規定に該当するとしてした前記各図面の公開拒否処分が,適法とされた事例 4 建築の設計図面自体は一般的に公衆に提供されることを予定している著作物ではなく,設計者が設計委託者に対し部数を限って設計図書を提供するのが通例で,設計図書自体を公表することは通常の場合考えられないが,このことを理由に設計図書に関し著作権の1態様である公表権が否定されるものではなく,委託者がその設計図書を利用してなす建築も1回かつ1棟に限られていること,設計委託契約上の権利義務は相手方の書面による同意がなければ第三者に譲渡できないとされていることからすると委託者に設計図書を提供することは公衆に提供することに当たらず,また,建築確認申請に際し設計図書を添付,提出したことも,建築確認という行政手続のために当該行政庁に提出したものであり,公衆に提供したことには当たらないとした事例 5 公文書公開条例に基づき,新築マンションの設計図面を公開することは,著作物である当該図面に設計者の設計上の創意工夫ないしノウハウが含まれていることからすれば,同人に明らかな不利益を与えると認められるとした事例 6 神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)に基づく公文書公開請求に対する拒否処分の理由付記につき,違法はないとされた事例

裁判要旨

1 神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)5条1項2号にいう「明らかに不利益を与えると認められるもの」とは,不利益を与えるおそれだけでは不十分であるということを意味し,その不利益は,現実的,具体的なもので,かつ,客観的に明白なものでなければならないが,「経済活動等の正当な活動を困難にするような不利益」ないし「実質的に重大な不利益」に限定されるものではない。 2 神奈川県の機関の公文書の公開に関する条例(昭和57年神奈川県条例第42号)5条1項1号にいう「特定の個人が識別され,又は識別され得る」とは,当該情報のみにより識別できる場合だけではなく,他の資料をも総合すれば容易に特定の個人を識別し,又は識別することができる場合も含まれる。

全文

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