裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
昭和63(行コ)12
- 事件名
国民年金出張検認手当返還請求控訴事件
- 裁判年月日
平成元年3月30日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 「4000万円未満の支出については所管課長が支出決定をする」旨を定めた東京都世田谷区事案決定手続規程(昭和54年世田谷区訓令甲第4号)に基づき,区の職員に対する出張検認手当の支出決定は,同区役所福祉部国民年金課長が行うものとされていた場合につき,同規程は訓令にすぎないことや,同区においては,権限の委任をする場合,外部に公示される規則という法形式により,明確に権限の委任をうたっていること等の事情にかんがみると,同規程は,区長の権限を所管課長に対し,権限の委譲を伴ういわゆる外部的委任をしているのではなく,権限の委譲を伴わないいわゆる内部的な委任(専決)をしているものと解すべきであるとした事例 2 区長が,所管課長に対し,支出負担行為である支出決定をすることにつき,いわゆる内部的な委任(専決)をし,現実に所管課長が支出決定を行った場合において,支出決定権限は,所管課長に委譲されたわけではなく,あくまでも,区長に属しているのであるから,所管課長が違法な支出決定をしようとする場合,区長としては,本来的な権限者として,少なくともその指揮監督上これを阻止すべき責任があり,故意又は過失によりこれを阻止しなかった場合には,区に対し損害賠償責任を負うものと解すべきであるとした事例 3 国民年金の納付手続が出張検認方式から規則検認方式に替わったにもかかわらず,出張検認方式採用時代,同事務に従事する職員に支給されていた特殊勤務手当である「出張検認手当」を支給し続けたことが違法であるとして,区長個人を被告として提起された地方自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求が,同手当の支給決定は,区長の補助職員である福祉部国民年金課長に,いわゆる内部的な委任(専決)がされていたものであり,現実の支給決定も,同課長が行っていて,区長自身は関与していなかったものであるが,区長としては,出張検認手当の問題性について認識し得べき地位にあったと認められるにもかかわらず,担当課長による支給決定を阻止しなかった点において,少なくとも指導監督上の過失があり,損害賠償義務を免れないとして,認容された事例 4 国民年金の保険料の納付方法が出張検認方式から規則検認方式に切り替わったにもかかわらず,区が,国民年金の保険料の収納事務に従事する区職員に対し,出張検認方式採用当時職員に支給されていた「出張検認手当」という名称の特殊勤務手当を支給し続けた場合につき,特殊勤務手当は,手当支給の根拠となる職員の給与に関する条例(昭和26年世田谷区条例第11号)13条及び職員の特殊勤務手当に関する規則(昭和42年世田谷区規則第11号)によれば,著しく危険,不快,不健康又は困難な職務その他の著しく特殊な勤務に従事する職員に対し,その職務の特殊性に応じて支給されるものであり,出張検認手当も,出張検認事務の危険性,困難性に着目して支給されていたものと考えられるところ,事務方式の変更により規則検認方式が採用された段階においては,このような事務の危険性,困難性は認められないのであり,それにもかかわらず,区が前記手当の支給を続けたことは,前記条例の規定等に違反し,違法であるとした事例
- 裁判要旨
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