裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
昭和57(行ウ)4
- 事件名
損害賠償代位請求事件
- 裁判年月日
平成元年3月17日
- 裁判所名
松山地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 県のした靖国神社及び県遺族会に対する公金の支出が違憲であるとして提起された県知事,県東京事務所長及び県生活福祉部老人福祉課長各個人に対する地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟において,靖国神社に対する支出に係る公金の支出負担行為及び支出命令の権限は,県会計規則の規定により県知事から県東京事務所長に委任されており,県遺族会に対する支出に係る公金の支出負担行為及び支出命令は,県処務細則及び県庁事務決裁規程により県生活福祉部老人福祉課長が専決していた場合につき,同法242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当するか否かの判断は,本来,類型的定型的に行われるべきであるとして,県知事,県東京事務所長及び県生活福祉部老人福祉課長は,いずれも,前記「当該職員」に該当するとした事例 2 県が,6年間にわたり,靖国神社に対し,春秋の例大祭及び夏のみたま祭の際に玉ぐし料等の名目でした,それぞれ5000円ないし8000円の公金の支出が,その目的は,宗教的意義を有するものであり,その効果についても,靖国神社に対する前記のような支出が20数年間にわたり毎年継続して行われてきていることや,靖国神社が戦前において国家と強く結び付いており,戦後においても国家との間に結び付きを持とうという動きの続いている宗教団体であることなどを考慮すれば,前記支出は,県と靖国神社との結び付きに関する象徴的役割を果たしており,その結果,靖国神社の宗教活動を援助,助長,促進する効果を有するものであるから,同支出によって生じる県と靖国神社との結び付きは,わが国の文化的・社会的諸条件に照らし,相当とされる限度を超えているとして,憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たるとされた事例 3 県が,県護国神社で行われる春秋の慰霊大祭に際し,供物料の名目で,県遺族会に対してした,毎回1万円の公金の支出が,同支出の実質は,県が県護国神社の主宰する慰霊大祭に対する供物料の献納であり,供物料献納の意義,県護国神社の靖国神社地方分社としての性格及び供物料支出行為の継続性などにかんがみると,同支出は,その目的が宗教的意義を有し,その効果が県護国神社の宗教活動を援助,助長,促進することになるものであって,その支出によって生じる県と県護国神社との結び付きは,わが国の文化的・社会的諸条件に照らし,相当とされる限度を超えているとして,憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たるとされた事例 4 県のした靖国神社及び県遺族会に対する公金の支出が違憲であるとして提起された県知事個人に対する地方自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求が,県知事は,前記公金の支出負担行為叉は支出命令を直接行ったものではないが,その公金の支出を行うべきであるとの,政治的信念ともいうべき強固で明確な意思を,長期にわたり継続的に有しており,県知事から靖国神社に対する支出に係る公金の支出負担行為及び支出命令についての権限の委任を受けていた県東京事務所長及び県遺族会に対する支出に係る公金の支出負担行為及び支出命令を専決していた県生活福祉部老人福祉課長は,県知事の意思に従う以外の方法で職務を執行するよう期待することはできない立場にあったというべきであるから,前記支出は,実質的には,県知事が自らこれを行ったものと評価できるとして,認容された事例 5 県のした靖国神社及び県遺族会に対する公金の支出が違憲であるとして提起された県東京事務所長及び県生活福祉部老人福祉課長各個人に対する地方自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求が,前記公金の支出は,その支出負担行為及び支出命令の権限を法令上本来的に有する県知事が,その政治的信念ともいうべき強固で明確な意思に基づいて自らこれをしたものとみるべきであり,県知事から靖国神社に対する支出に係る公金の支出負担行為及び支出命令の権限の委任を受けていた県東京事務所長及び県遺族会に対する支出に係る公金の支出負担行為及び支出命令を専決していた県生活福祉部老人福祉課長は,県知事と異なる判断に基づく行為に出ることは期待できなかったから,同人らにはこれらの行為につきその担当者として職務上要求される義務の懈怠はないとして,棄却された事例
- 裁判要旨
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