裁判例結果詳細

事件番号

昭和42(行ウ)82

事件名

公安条例に基づく条件付許可処分取消し請求(後に行政事件訴訟法第21条により国家賠償請求に変更),損害賠償請求併合訴訟

裁判年月日

昭和44年12月2日

裁判所名

東京地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 東京都公安条例第1条に基づく集団示威運動の許可申請に対し同条例第3条第2項所定の24時間前までに許否の処分がない場合申請どおりの集団示威運動ができるか 2 国会およびその周辺における集団示威運動を禁止するため東京都公安条例第3条第1項ただし書第6号により集団示威運動の進路を変更する条件を付することかできるか 3 東京都公安条例に基づく集団示威運動の条件付許可処分により表現の自由が侵害された場合損害賠償を請求しうる者の範囲 4 東京都公安委員会の進路変更の条件を付した許可処分により国会周辺(裏側)を通る集団示威運動ができなくなったことにより精神的損害を被ったとして,その主催者がした都に対する損害賠償の請求が認められた事例

裁判要旨

1 東京都公安条例の採用している集団示威運動に関する許可制は,実質届出制として解釈適用すべきであるから,同条例第1条に基づく許可申請に対し同条例第3条第2項所定の24時間前までに許否の処分がない場合は,許可があったものとみなし,申請どおりの集団示威運動ができるものと解する。 2 東京都公安条例は地方自治法第2条第3項第1号の事務に関し制定されたものであって,地方住民の生活の安全と秩序を図ることを趣旨,目的とするものであるから,同条例第3条第1項ただし書第6号により集団示威運動の進路を変更する条件を付しうるのは,その進路が一般都民の生活秩序にとくに支障となる事態が予見される場合に限られ,同条項が国会およびその周辺を聖域として一般官公庁に対する保護以上にとくに厚く保護することを予想しているとは解しがたく,したがって国民全体の利益にかかわる国政審議を保全するため国会およびその周辺における集団示威運動を禁止するには国会の制定する法律によるべきである。 3 東京都公安条例は,集団示威運動による表現の自由の特殊性にかんがみ,特に「主催者」という地位を設定し,事実上団体が主催する場合でも,その団体の代表者を「主催者」とし,その者を権利義務の主体としていると解されるから,東京都公安委員会の同条例に基づく処分により直接の利益,不利益を受けるのは右処分の名宛人である「主催者」であって,参加者はもとより,事実上集団行動を主催した団体も,事実上のもしくは反射的利益,不利益を受けるにすぎず,したがって同条例に基づく条件付許可処分により表現の自由が侵害された場合,「主催者」は損害賠償を請求できるが,「主催者」でないものは右集団示威運動の行進に参加し,その指導者であったとしても請求できないというべきである。

全文

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