裁判例結果詳細
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高等裁判所
- 事件番号
昭和38(う)1293
- 事件名
国家公務員法違反被告事件
- 裁判年月日
昭和43年9月30日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第七刑事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第21巻5号365頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 昭和四〇年法律第六九号による改正前の国家公務員法第一一〇条第一項第一七号にいわゆる「あおり」行為及びあおりを「企てた」行為の意義 二、 あおり行為を「企てた」場合にあたる一事例 三、 「あおり」行為にあたる一事例 四、 非現業の国家公務員の組織する団体ないし組合の行なう争議行為について政治的目的を有するものと解すべき一事例
- 裁判要旨
一、 昭和四〇年法律第六九号による改正前の国家公務員法第一一〇条第一項第一七号にいわゆる「あおり」行為とは、争議行為を遂行させる目的をもつて、文書若しくは図画又は言動により、不特定又は多数人に対し、その行為を実行する決意を生ぜしめ、又は既に生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることを指称し、又、あおりを「企てる」行為とは、あおりの実行行為を計画することを指称する。そして、右のいずれの場合においても、その目的、規模、手段方法、その他一切の附随的事情に照らし、刑罰法規一般の予定する程度の違法性及び刑罰を科するに足りる程度の反社会性、反規範性を具有していることを必要とすると解すべきである。 二、 非現業の国家公務員の組織する団体ないし組合の中央執行部の役員が、警察官職務執行法(以下、警職法と略称)改正案に反対する目的をもつて、当局側の管理意思に反し、全国の下部組織に対し、一せいに正午出勤の行動に入れなる旨の指令を発することは、前記あおり行為を企てた場合にあたる。 三、 前記役員が、前記同一の目的をもつて、当局側の管理意思に反し、本省庁舎の各入口に人垣を築いてピケツトを張り、一部の入口の扉を旗竿等をもつて縛りつけ、又一部の入口の内部に机、椅子等を積み重ねるなどした状況のもとに、ほとんど全部の職員約二、五〇〇名を入庁させないようにしむけたうえ、傘下組合員なる国家公務員に対し、勤務時間内二時間を目標とする職場大会に直ちに参加するように反覆申し向けて説得、慫慂することは、前記あおり行為にあたる。 四、 前記団体ないし、組合の争議行為は、その目的が、給与その他の勤務条件の改善、向上等の経済的なものにあるのではなく、警職法改正案に対する反対闘争にあるような場合においては、政治的目的を有するいわゆる「政治スト」の範疇に属すると解すべきである。 (参考) 要旨二に関する訴因は文書等の発送にとどまる。
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