裁判例結果詳細

事件番号

昭和41(う)2605

事件名

郵便法違反教唆被告事件

裁判年月日

昭和42年9月6日

裁判所名・部

東京高等裁判所 第十一刑事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

第20巻4号526頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

一、 昭和四一年一〇月二六日最高裁判所大法廷言渡の判決にいわゆる「争議行為が労組法一条一項の目的のためでなくして政治的目的のために行なわわたような場合」ということの解釈例 二、 同判決にいわゆる「争議行為が……国民生活に重大な障害をもたらす場合」ということの意義 三、 右「国民生活に重大な障害をもたらす場合」に該当しないとされた具体的事例

裁判要旨

一、 昭和四一年一〇月二六日最高裁判所大法廷言渡の判決にいわゆる「争議行為が労組法一条一項の目的のためでなくして政治的目的のために行なわれたような場合」とは、その争議行為の掲げる要求項目の中に荀しくも政治にわたる事項があればこれに該当するというわけのものではなく、たとえ経済的な要求事項と併せて政治的な要求事項を掲げているときであつても、右政治的な事項が争議行為の主たる目的ではなく、単に争議行為の機会を利用して政治的な意見ないし要求を表明しているに過ぎないような場合(換言すれば、右政治的な事項も主張はするが、それが全面的若くしは部分的にでも容れられない限りその争議行為を中止しないというほどの強大な比重を占めていないような場合)は、これに該当しないものと解すべきである。 二、 同判決にいわゆる「争議行為が……国民生活に重大な障害をもたらす場合」とは、同判決が例示する「社会の通念に照らして不当に長期に及ぶとき」のほか、その争議行為が全国一斉若しくはこれと同じ規模において行なわれるとき、或いは広範囲にわたり且つ長期に及ぶ(必ずしも不当に長期に及ばないときを含む)とき、或いは国民生活の一部に私生活上取り返しのつかないような深刻な障害を与えるときなどを意味するものであり、さらに国政・地方行政・重要な国際若しくは国内の経済取引等に対する障害も、ときによつてはこれに該当するものと解すべきである。 三、 本件のように、東京中央郵便局における職場離脱という争議行為により、郵便物の取扱をしなかつた時間は二時間四〇分位ないし六時間位であり、その間取扱をしなかつた郵便物の数も多数(本文参照)に及んでいるが、右不取扱により生じた郵便物の差立遅延は、普通郵便で二時間五〇分ないし一〇時間三〇分、その他速達等特殊郵便についても最低二時間三五分最高二四時間(なお差立を受けた各地における配達遅延も大体右二四時間を出でない)、同じく配達遅延は三〇分ないし六時間四〇分という程度に止まり、国会関係の郵便物も管理者の処理により予定どおり差し立てられているときは、右判決にいわゆる「国民生活に重大な障害をもたらす場合」に該当しない。

全文

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添付文書1

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